6月の第3日曜日は「父の日」。ときに厳しく、そして優しく育ててくれた父との思い出、感謝をプロ野球選手たちが語った。

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阪神伊藤将司投手(26)にとって、父正宏さん(52)は名コーチだ。プロ1年目だった昨季の6月5日、ソフトバンク戦で6回3失点を喫し、自身3連敗。その夜、正宏さんの電話が鳴った。「どう見えてる?」。プロに入って息子から電話をかけるのは、初めてのことだった。「小さい頃から見てくれていたので、アドバイスがほしかった」。父からは「変化球の時、腕の振りが緩くなってない?」と言葉をもらった。翌週、同12日の楽天戦は7回1失点で4勝目。プロ1年目から10勝できた背景に、父の助言は大きかった。

千葉・横芝光町で牛乳店を営む正宏さんの朝は早い。午前3時には配達に向かう。それでも学校終わりには毎日、自宅で練習に付き合ってくれた。今年5月29日のロッテ戦では、プロで初めてZOZOマリンで先発。父は、息子から贈られた阪神のジャージーを着用し、スタンドから凱旋(がいせん)登板を見守った。「実家に帰るたびに、横浜高のジャージーとかも着ている。応援モードに入ったら恥ずかしいっす(笑い)」。孝行息子は照れながら、どこかうれしそうだった。本当の恩返しはこれからだ。【中野椋】