阪神大山悠輔内野手(27)が意地のプロ100号王手弾だ。5点を追う7回、広島床田から左翼へ18号2ラン。9回にも適時打を放つ全3打点で、完敗ムードの試合を面白くさせた。阪神日本人選手の月間10本塁打は、06年の浜中治以来16年ぶり。チームは広島戦9戦勝ちなしで再び4位に後退したが、タテジマでは田淵、掛布、岡田に次ぐスピード100号を決め、一夜でAクラス返り咲きといきたい。

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大山のフォロースルーに目を奪われている暇はない。マツダスタジアム上空の雨雲を切り裂くような鋭い放物線。左翼スタンド看板にぶち当てた主砲は、悠々とベースを回った。

「流れを変えるためにも、何とかしたいという思いだけでした」

0-5の完敗モードで空気を一変させた。7回1死一塁。左腕床田の149キロ。内角をえぐる「クロスファイア」を引っ張り上げた。6月15試合で10号。球団日本選手では、06年4月の浜中以来となる月間2桁弾を決めた。17年7月1日のヤクルト戦で原からプロ1号を放って以来、1816日を経て99号に到達。球団生え抜きでは12年鳥谷以来の100号に王手をかけた。

「打席に入るまでの準備、前の打席までの打ち取られ方。しっかり頭に入れながら打席に入れている。準備はしっかりできていると思うし、それを一発で仕留められているので、いい結果につながっていると思うんですけど」。リーグ2位タイ18号2ラン。手応えはある。状態の良さにもうなずく。ただ、何よりもほしいものがあるから、口調はさらに強くなる。

「でもやっぱり、勝つことによってホームランの価値が上がると思うので、なんとか勝ち試合に持っていけるように」

中飛に倒れた5回は左翼ポール左への特大ファウルを放った。「あれが入っている、入っていないによっては流れが変わってくる。そう簡単ではないですけど、レベルをもっともっと高めていければ」。99本を打つ過程で、何千打席も失敗してきた。この日も当然のように反省の言葉が口を突いた。

「好不調の波が激しいのが僕の課題でもあるというのは自分でも分かっている。この調子を最低でも維持できるようにもっともっとやっていきたい」

9回には中前適時打を放ち、広島の守護神栗林から通算13試合目でチーム初得点。広島と入れ替わりで再び4位に後退したが全3打点で気を吐いた。「相手の守護神を打つ打たないで明日も変わってくる。明日やり返せるように頑張りたい」。広島戦は今季0勝8敗1分けで悔しさが募る。100号メモリアルで3位返り咲きを期す。【中野椋】

▼大山が通算100本塁打に王手をかけた。達成すれば、阪神在籍中のみの本塁打数では、鳥谷敬が12年9月19日巨人戦で達成して以来、19人目になる。仮に22日に達成すれば、通算648試合目での到達となり、阪神では田淵幸一、掛布雅之、岡田彰布に続いて4番目のスピード到達となる。

▼大山が18号2ランを放ち、6月10本目の本塁打となった。月間2桁本塁打は、阪神ではブラゼルが10年6月に10本塁打して以来。日本人では浜中治の06年4月10本塁打以来。球団最多は86年6月バースの13本塁打。日本人最多は別当薫、田淵幸一、真弓明信の11本塁打。6月はまだ8試合残っており、大山は球団記録を塗り替える可能性がある。また、プロ野球最多は13年8月バレンティン(ヤクルト)の18本塁打。

▽阪神矢野監督(大山について)「内容も全部良いしね。凡打の内容も良いし。状態はかなり良いところで維持できているかなと思う」

○…3番近本が18試合連続安打と自己最長をさらに更新した。初回と4回は凡退したが、7回に先頭で床田から中前打を放ち、直後の大山の2ランにつなげた。9回も先頭で二塁への内野安打とし、4試合ぶりのマルチ安打。井上ヘッドコーチは「3番に置いている自覚というのは持ってくれていると思う」と目を細めた。

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