阪神近本光司外野手(27)の関学大の1学年後輩で、学生時代から現在も個人トレーナーを務める植松弘樹さん(27)が日刊スポーツの取材に応じ、球団タイ記録となる30試合連続安打の舞台裏を明かした。記録が止まりかけた3日の中日戦が今季の進化を象徴するゲームと分析した。【聞き手=中野椋】

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近本さんとは関学大時代から打撃、体の使い方、野球への考え方など一緒に考え、今も日々追求しています。なぜ継続して安打を打てているのか。結論から言えば、過去4年の中で最も“整っている”状態だからだと言えます。

整っているとはどういうことか。それは調子、相手投手にかかわらず、自らにベクトルを向け、やるべきことができている状態。体と頭の準備が打席に入る前にできている。不安が限りなく少ない状態で打席に入れていると思います。

よく話します。相手はコントロールできないから、自分をコントロールしましょうって。でも1年目、2年目とか、開幕直後の数字が悪い時は、ヒットを打ちたいって気持ちが強い。それで相手に合わせた結果、自分のスイングができないまま試合が終わってしまう。それは僕らの中で、おおいに反省すべきことです。

3日の中日戦で柳投手から、3打席目で右前打を放った試合が象徴的でした。「柳がどうかよりも、自分の問題だった」と試合後に話していたのを記事で見ました。このコメントこそ、普段から話していること。本人は「今日はダメだなと思った」と話していたようですが、もし、あの試合でヒットが止まっていても、前の2打席に後悔は残っただろうけど、3打席目以降に後悔は残らなかったはずです。逆に言うと、安打を打てても、自分のスイングができずに終わっていたら反省すべき。記録うんぬんより、そこなんです。

近本さんは独特な感覚の持ち主。「足を上げてから打つ瞬間の記憶はなくて、気づいたら打球が飛んでいる」と言います。打席では無意識だからこそ、僕らの会話は日々の打席を言語化して振り返ることが主。言語化することで課題も見えてくるし、やるべきことが見えてくるんです。

正直、連続試合安打の話題は僕らの中では出ない(笑い)。やっていることの副産物。ミーティングで話している時の冷静さがあれば、相手関係なく打てる。目標の200安打へ、折り返しの100安打まで来ました。自分のやるべきことをできれば、結果はついてくると信じています。

◆植松弘樹(うえまつ・ひろき)1995年(平7)4月30日生まれ。香川・小豆島出身。小豆島(現小豆島中央)2年春には捕手として香川県大会優勝。関学大に進学後はけがに悩まされ、学生コーチとして活動。卒業後は関学大職員として勤務するかたわら、近本の個人トレーナーとしても活動。22年4月からは、アマチュア時代から近本のサポートを続ける「MTXアカデミー」に転職しトレーナー業に専念している。