阪神才木浩人投手(23)が、1161日ぶりの甲子園のマウンドで完全復活を証明した。360度、大観衆が後押しする中、鬼気迫る表情で6回87球を投げ終えた。

「甲子園のマウンドは久しぶりでしたが、たくさんのお客さんが入ってくれて、声援もすごかったですし、楽しみながら投げることができました」

トミー・ジョン手術から復活後、2試合目で最長イニング。4安打、7奪三振、1失点と上々の内容だ。前回3日の中日戦(バンテリンドーム)では5回無失点で1159日ぶりの勝利。中12日、またも竜打線と対し、今度は進化を証明した。

休養十分、飛ばしまくった。岡林、木下を連続三振に仕留め、初回3者凡退。2回に味方の失策で1点を失ったが、簡単には崩れず最少失点で切り抜けた。19年5月12日中日戦以来の聖地登板。「先発としてもっと長いイニングを投げたい」と語っていた右腕は、6回2死一、二塁で代打平田を遊直に仕留めた。

「先制点を取られてしまったのは悔しいですが、梅野さんのリードのおかげで、なんとか6回まで粘りの投球ができたかな」

この日は兵庫・須磨翔風の中尾修監督(56)が観戦に訪れていた。高校入学当初の球速は120キロにも満たず、スライダーの投げ方さえ知らなかった右腕。ただ、肩関節が柔らかく、才能を見抜いてくれた恩師だ。兵庫県の公立校で汗を流し大きくなった。近くて遠かった甲子園が、今は本拠地。今季2勝目こそ逃したが、躍動する姿は何よりの恩返しとなったはずだ。

前回、ヒーローインタビューで男泣きした背番号35は、たくましい表情でベンチで声をかけ続けた。復帰後2試合11イニングでわずか1失点。厳しい夏場、復活を遂げた若武者が救世主になる予感だ。【中野椋】

◆才木の前回登板 7月3日の敵地中日戦で5回無失点と好投し、1159日ぶりの勝利を挙げた。チームの鬼門バンテリンドームで、5安打5奪三振。5回に3安打で2死満塁のピンチを背負ったが、岡林を三邪飛に仕留めて役割を果たした。最速153キロで、76球のうち51球が直球。ドラフト同期の大山の1発など打線の援護も受け、「才木のために」で結束した試合だった。観戦した両親の前でヒーローインタビューを「ずっと支えてくれていた人たちのおかげで、またここに戻ってくることができた。本当に感謝の気持ちしかないです」と涙を流した。

○…加治屋が8回の1イニングを無失点に抑えた。7日の広島戦(甲子園)で2/3回を投げて2失点して以来のマウンドで先頭の岡林を三ゴロに料理。続く木下に四球を与えたが、4番ビシエドを捕邪飛、最後は石垣を空振り三振に仕留めた。「前回登板で失点してしまったので、やり返す気持ちでマウンドに上がりました。0点で抑えることができてよかった」と胸をなで下ろした。

○…浜地も1回を無失点にまとめた。1点ビハインドの9回に4番手で登板し、先頭三ツ俣は二ゴロ、平田は中飛。土田には中前打を打たれたが、慌てることなく最後は代打山下を中飛に仕留めた。「調子があまり良くない中、なんとか0点に抑えられたことは、これから生かしていけるかなと思います。投手陣が踏ん張ってきたゲームでしたし、攻撃につながるような投球ができてよかった」と納得顔だった。

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