マイナビオールスターゲーム2022第1戦がペイペイドームで行われ、全セの阪神湯浅京己投手(23)が初出場の球宴で無失点デビューした。7回に登板し、2死一、二塁のピンチを招いたが、全パの4番西武山川に力勝負を挑んで遊ゴロに打ち取った。魂のこもったオール直球の14球。今季台頭した虎のセットアッパーが、夢の舞台でさらなる飛躍の足がかりをつかんだ。

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湯浅は首を振った。選んだのはフォークではなく真っすぐだった。7回2死一、二塁。山川に真っ向勝負を挑んだ。「(自分で)首を振って真っすぐだったので、空振りを取りたかったな」。初球に外角153キロ直球で遊ゴロ。試合前のホームランダービーでは同僚大山を初戦で倒し、2回に青柳から本塁打を放った相手を力でねじ伏せた。悔しげな言葉とは裏腹、白い歯を見せ、楽しげに初の球宴マウンドを下りた。

7回の1イニングを無失点。全14球、こん身のストレートを投げ込み、最速154キロ。全てが150キロを超えた。「(マウンドに)行く前は決めてなかった」。ただ、1死一塁からの清宮との対戦がハートに火をつけた。

「同級生ってこともあったので『フォークいきたくないな』って。首を振って真っすぐを選択して、そこで最後まで真っすぐで押そうと思いました」

福島・聖光学院時代、故障に苦しみスコアラーも経験した右腕にとって、早実で甲子園のスターだった同学年の男はまぶしい存在だった。入団会見では「リーグは違うけど、いつか対戦してみたい」と熱望。結果は四球でも、忘れられない時間になった。この日も清宮はサヨナラアーチでMVP。一方で、地道に努力し花を咲かせた背番号65の姿も、多くの人の心に響いたはずだ。

「高校の時は考えられなかったこと。フォアボールってのは納得いかないけど…。もっと力と力の勝負したいなって思いますね」

全てが新鮮な1日だった。「今日はまだ緊張して…」と試合前には1人ぼっちの時間もみられたが、勇気を振り絞ってアタックした。「戸郷君、栗林さん、伊勢さん、森下さん、高橋さん…。ブルペンでもすごいボールを投げていた」。目を丸くさせ、成長の糧を必死に求めた。「明日もあるので、いろいろ吸収できれば。いっぱいしゃべりたいと思います」。シンデレラボーイが、夢の時間をまだまだ満喫する。【中野椋】

○…湯浅の父・栄一さん(50)と母・衣子さん(50)が、三塁側スタンドから晴れ舞台を見守った。実家のある三重・尾鷲市から車で約10時間かけ、この日観戦に訪れた。栄一さんは「力んでいたね。いつも通り放るって言ってたんやけどな」と笑顔。「まさかな、いきなりオールスター出てるのがすごいこと。僕たちもオールスターは初めて見る。夢のようやね」。度重なる故障を乗り越え、プロ4年目で大きく飛躍した息子の活躍に感慨深げだった。

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