阪神先発の青柳晃洋投手(28)が両リーグ独走の12勝で、5年ぶりに夏の長期ロード白星発進を導いた。

巨人戦に先発し、味方のミスで1度は逆転されたが、耐え忍んで6回自責1の好投。7月ラストゲームで、ヤクルト村上に3打席連発を食らって敗れたショックを一掃した。阪神投手の9連勝は03年井川慶以来で、右腕なら85年中田良弘以来37年ぶり。両投手はその年優勝に大貢献しただけに、ミラクルVへの吉兆かも。

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青柳の勝利球は1度、ロドリゲスがスタンドに投げ入れていた。助っ人はサインバットをファンにプレゼントし無事回収。プロ7年目、116試合目で通算50勝に到達した右腕のもとに戻ると、笑みがはじけた。

「今、100勝したらすごいピッチャー。半分の節目でうれしいけど、僕の試合で50回勝っているということなので、チームが勝っているのがうれしいです」

巨人はコロナ禍で13日ぶりの試合だったが、3番丸、4番岡本和らほぼベスト布陣だった。それでも力強い投球で3回まで完全投球。4回先頭に死球を与え、佐藤輝、大山の失策が絡んだ3失点で逆転されたが慌てない。「先頭はもっと大事にしなきゃいけなかった」。反省を胸に6回自責1の好投。阪神では03年井川以来のシーズン9連勝で、両リーグ独走の12勝目だ。

バクバクと心臓の鼓動を感じ、必死で耳を傾けた。7月27日、松山での球宴2日目。目の前には、小学6年で変則フォームに取り組んでから、憧れ続けたヤクルト高津監督がいた。「さすがに緊張しすぎで…」。球宴初日の前日はアタックできず。ラストチャンスの試合前、勇気を振り絞ってシンカーについて聞いた。

「根本からして違った。僕のシンカーと…。高津さんのシンカーを投げられたら、もう1個成長できる」

自身の求める“抜け感”のある球速の遅い宝刀。「高津さんは本当に縦に落とすイメージ」と目を丸くする。「右バッターに遅いシンカーがあれば、ツーシームも(生かして)いける」。この日もシンカーを交えたが「(高津シンカーは)すぐには投げられない」と苦笑い。「これからレベルアップする上で、シフトチェンジしていければ。成長の余地はある」。敵将との野球談義を力に変える。

7月ラストゲームでヤクルト村上に3打席連発を食らった。だが逆転負けのショックをエースが振り払った。12勝、防御率1・38、勝率9割2分3厘で堂々の3冠をキープ。矢野監督も「(4回の)あのミスで負けたくなかったんでね。ああいう悪い流れを盛り返すって、逆にムードが上がる試合にできた」と青柳らナインをたたえた。4年連続勝ち越しのない長期ロード白星発進で、貯金は今季最多タイの2。真夏の猛虎ドラマが開演した。【中野椋】

▼阪神は夏の長期ロードを5年ぶりに白星発進した。前回白星発進だった17年はロードで16勝10敗1分けと勝ち越したが、黒星発進だった過去4年はいずれも勝ち越した年はなかった。矢野監督も就任3年間で長期ロードで勝ち越しがない。

▼矢野監督就任後、8月の東京ドーム巨人戦で7戦目にして初勝利を飾った。19、20年はともに3戦3敗。21年は東京ドームでの巨人戦はなかった。8月の東京ドーム巨人戦は通算で33勝85敗6分けで勝率2割8分と苦手にしている。

○…浜地が直球勝負で巨人の反撃を食い止めた。勝ち越した直後の7回に登板して3者凡退。北村、小林は自慢の直球で押して三振に斬った。これで12試合、自責点なし。セットアッパーに定着した24歳右腕は「点を取ったあとでしたし、しっかり3人で(切る)というのは頭にあった。その試合、目の前の1球に集中した結果の積み重ねだと思います」と充実の表情だった。

○…湯浅がホールドポイント(HP)を30の大台に乗せた。1点リードの8回に登板。150キロ前後の速球を軸に、フォークも低く制球し、吉川と重信から2三振を奪うなど、危なげなく3人で抑えた。29ホールド、30HPともリーグトップを快走。「いつも通り、強気で向かっていく気持ちでした。勝ち越し、浜地さんの投球といい流れでもらったバトンだった。自分も0点で後ろにつなげられてよかった」と振り返った。

○…守護神岩崎が村上ショックを振り払った。3点リードの9回を3人で抑えて23セーブ目。丸、岡本和、代打石川を7球で片付けた。7月31日のヤクルト戦(甲子園)で1点リードの9回に村上に同点ソロを被弾。7回には渡辺がソロ、延長11回には石井が3本目となる決勝2ランを許し、投手陣には屈辱的な敗戦になった。出直しの一戦で、ブルペンが完璧な救援ぶり。矢野監督も「優(岩崎)は経験があれだけあるので、もう任せるだけ」と信頼が揺らぐことはなかった。

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