西武は16日、内海哲也投手(40)が、今季限りで現役を引退すると発表した。9月に会見と引退セレモニーをベルーナドームでの試合で行う予定。内海は03年ドラフト自由枠で巨人に入団。エースとして、通算6度のリーグ優勝に貢献した。最多勝2度、最多奪三振、ベストナインなど、数々のタイトルを獲得。09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では世界一も経験した。18年オフにFAの人的補償で西武に移籍。今季からは投手兼任コーチを務めたが、40歳を区切りにマウンドに別れを告げることを決断した。

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「ちょっと、話があるから、聞いてくれる?」。家族6人でテーブルを囲んだ6日の夜、内海は妻聡子さん、4人の子どもたちを前に静かに語りかけた。震える声、かしこまった雰囲気を察し、子どもたちの顔が引きつる。「今年で引退するわ」。そう伝えると、全員がボロボロと涙を流し、リビングにおえつが響いた。

開幕前から引退を覚悟した上で、プロ19年目のシーズンに臨んだ。移籍1年目の19年は故障で1軍登板はなく、20、21年はそれぞれ1勝。ここまで西武での最多登板は、20年の4試合だった。契約更新を提示してくれた球団に感謝の思いを持ちながら、今季1軍の戦力になれなければ、ユニホームを脱ぐと決めていた。

今季は初登板だった5月7日の日本ハム戦で通算2000投球回を達成。同21日の日本ハム戦にも先発した。40歳での白星は逃したが、登録抹消後も2軍で懸命に調整。12日の楽天戦から中継ぎで再昇格した。シーズンが続く限り、チームのために腕を振る意向だが、引退の決断は揺るがなかった。

今年から投手兼任コーチを務め、コーチ業と自らの練習を両立させた。2軍調整中は早朝に球場入り。自身のメニューを消化した後、指導の時間に充てた。昨年までも助言を送る機会は多かったが、コーチ兼任の立場で選手と接する中で、成長に一喜一憂する新たな思いも抱き、学ぶことも多かった。

19年間で135勝を積み重ねてきた。11年から2年連続最多勝を獲得。祖父もプレーした巨人のエースとして、スポットライトを浴びたが、その姿は孤高ではなく、仲間に囲まれ、慕われる真のエースだった。悔しくて涙し、仲間の思いに感動して泣いた。人間くさく、飾らない姿は愛された。

20代中盤の頃、車の中でよく聞く曲は、「DREAMS COME TRUE」の「何度でも」だった。何度でも、何度でも、はい上がった現役生活。闘志をたぎらせ、ラストシーズンを全うする。

◆内海哲也(うつみ・てつや)1982年(昭57)4月29日、京都府生まれ。敦賀気比から東京ガスを経て、03年ドラフトの自由獲得枠で巨人入団。07年最多奪三振、11年から2年連続で最多勝。12年にはセ・パ交流戦MVP、日本シリーズMVPに輝くほか、ベストナイン、最優秀投手も受賞。18年に炭谷のFA移籍に伴う人的補償で西武に移籍。今季から投手コーチ兼任。09、13年WBC日本代表。186センチ、93キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸4500万円。