20年秋以来2年ぶりのリーグ制覇を目指す星槎道都大が、北海学園大を5-0で下し、白星発進した。最速151キロ左腕、滝田一希投手(3年=寿都)が6回3安打9奪三振、2番手で登板した右腕、伊東佳希投手(3年=旭川北)が自己最速を更新する150キロをマークするなど3回1安打5奪三振。両投手の無失点リレーで勝利をたぐり寄せた。3季連続優勝を狙う東海大北海道と、北大も初戦を勝利した。

リーグ戦自身2勝目をつかんだ試合直後、滝田が空を見上げて目を潤ませた。そして言葉を詰まらせながら切り出した。「今年5月に母さんが亡くなって。この秋も母のために練習してきたので、開幕戦で結果を残せてよかった」。2季連続で開幕投手を任され、6回109球を投げ無失点。日本ハムなど4球団のスカウトが見つめる中、この日最速147キロの直球を軸に変化球も織り交ぜながら「今日が一番よかった」と試合をつくった。

春季リーグ戦中の5月6日、母美智子さん(享年52)が心筋梗塞で他界した。「病気持ちではなかったんですけど急に」。供養のためチームを離脱。しばらくは、母がこの世を去った現実を受け入れることができなかった。「大切なものを失ったので野球をやる気にならないというか、誰のためにやっていいかわからない。ここに来たのは母さんのためにやりたいとずっと思っていたので」。前を向けなかったが、周囲の支えを受けながら練習を積んできた。

母子家庭で兄と姉が2人ずつ、弟が1人の7人家族だった。寿都高を卒業後就職することも考えた。「進学だとお金がかかってしまう。でも野球をやめられなくて」。野球への強い気持ちを尊重してくれた母は背中を押してくれた。「5歳くらいの時からずっと1人で育ててくれた。朝から夜中まで働いてくれていた。ここの大学が決まった時からプロを目指してやっていこうと思っていた」と今も目標は明確だ。8月のタンチョウリーグではソフトバンク3軍と対戦し、最速151キロを計測。6回2安打無失点10奪三振と好投した。

大学で良きライバルとも出会えた。この日7回からマウンドを継いだ伊東とは同学年で仲がいい。「伊東がいなかったらここまで成長できなかった」。試合前日には2人きりで温泉に行き、食事もともにするなど開幕前に決起集会を開いた。チームは2年前にリーグを制したが、明治神宮大会は中止となった。「今年は滝田と一緒に」(伊東)と全国を見据えている。

「プロに行って恩返しするということが今僕ができること。1日1日を大切にして」。亡き母のために、まずは秋リーグ制覇達成に貢献する。【山崎純一】

■2番手の伊東佳希、自己最速150キロ

伊東は2番手で登板し3回1安打無失点と好投した。自己最速更新となる150キロを計測するなど、三振も5個奪った。「(先発の)滝田がリズムをつくってくれたのでそこにうまく乗っかることができたかな」と笑顔。「僕も彼が頑張っているのを見て負けられないと思っている。なんとか神宮に行きたい」と左右2枚で力を合わせ大舞台を狙う。

■大和竜晟4打点援護

3番大和竜晟二塁手(3年)が、公式戦初の4打点で投手陣を強力援護した。3回1死二塁で中前に先制適時打。「しっかり球を絞ってとらえることができた」。9回1死満塁では左中間を破る走者一掃の適時二塁打も放ち、猛打賞をマーク。「先輩方と神宮に行きたい。先輩にいい思いをさせてあげられるように頑張りたい」と次戦へ気持ちを高めた。