阪神はクライマックスシリーズ(CS)を争う4位広島に完敗し、1ゲーム差に迫られた。意地の二塁打を放ったのは佐藤輝明内野手(23)だ。この日糸井嘉男外野手(41)の引退会見が行われ、イズム継承を誓った近大の後輩が気を吐いた。チームのシーズン最終戦は28日のヤクルト戦(神宮)だが、CSに進出すれば糸井と野球ができる時間が続く。超人の花道を飾るために、何としても3位は死守したい。

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敗戦が決まると、阪神佐藤輝は険しい表情で引き揚げた。「アニキ」をCSに連れて行くためにも、勝たなければいけない試合だった。

試合前。近大の先輩で、尊敬する糸井の引退会見場に足を踏み入れた。花束を手渡し、感傷に浸った。「なんとも言えない、本当に寂しい気持ちです。年齢は離れていますが、アニキのような存在でした。自分が昨年入団して、実質(外野の)ポジションを奪ったような形ですが、関係なく優しく接してくれました」。

糸井の会見は後輩へのエールで締めくくられた。先輩は優勝、そしてCS進出を熱望していた。「テル、頑張れよ!」。直接、激励を受け、CSを争う4位広島との対決に臨んだ。

2回1死一塁の打席で低めの変化球をすくい上げた。右翼後方に伸びていく糸井のような弾丸ライナーは野間の超美技に阻まれた。5点ビハインドの8回第4打席は1死一塁で5番手矢崎を捉え、右中間を切り裂く弾丸二塁打。その後の2得点を呼び込み、劣勢の試合でネバーギブアップを体現した。

糸井には特別に目をかけてもらった。自主トレチーム「超人軍団」入りを認められ、オリックス吉田正も紹介された。1月に打撃練習やトレーニングをともにした佐藤輝は「全ての面で超人的な数字を残さないと超人にはなれない」と一流のレベルを肌で実感。イズムの継承を誓って今季に臨んでいた。

「結果が思うように出なくても腐らず、40代とは思えないほど自分を追い込んでおられたし、野球に対する情熱が素晴らしい。自分も何歳になっても、そういう選手でいたいと思う」。この先も外野手で一時代を築いた糸井の背中を追い続けることを誓った。

反撃はおよばなかった。成長した姿を見せること、そしてAクラス入りがあこがれの先輩への恩返しになる。【柏原誠】

▼阪神は14日の広島戦に敗れると、今季優勝の可能性が消滅する。ヤクルトの試合予定のない同日に阪神が敗れ、その後の残り8試合に全勝しても、最終成績は72勝68敗3分けで勝率5割1分4厘。ヤクルトが残り15試合に全敗しても、73勝68敗2分けで5割1分8厘となり、阪神を上回るため。13日阪神●ヤクルト○なら阪神のV逸が決まっていたが、ヤクルトも●だったため1日延びた形となった。

○…糸原は大先輩への思いを猛打賞に込めた。練習前は糸井の引退会見にサプライズ登場。1回1死では先輩の代わりにSMAPの「SHAKE」を登場曲に選び、中前打を決めた。「年は離れているけど、本当に仲良くしてもらった。室内で準備を怠らない姿勢とかはすごく見習うところ。阪神で優勝したいとずっと言われていた。糸井さんの思いもしっかり受け止めて全力でやっていきたい」と前を向いた。

○…近本は両リーグ最速で150安打に到達した。2点を追う5回1死一塁、フルカウントから中前に運び、4番大山の適時打につなげた。シーズン150安打はプロ1年目だった19年からの4年間で3度目。13戦連続安打で、2年連続の最多安打タイトルへ勢いを加速させている。

▼近本が今季の安打数を150本とし、昨季の178本から2年連続で150安打以上となった。阪神の打者としては、13~15年にマートンと鳥谷敬が3年連続で記録して以来。なお球団最長は4年で、今岡誠02~05年、金本知憲03~06年、赤星憲広03~06年の3人。

○…マルテが連日の適時打で気を吐いた。5点を追う8回1死二、三塁で代打出場。カウント3-1から広島矢崎の151キロ直球を左前にはじき返した。「いつでも準備はできていたよ。打つべき球を絞って、しっかりコンタクトすることを心がけた。いい結果になって良かったね」と納得顔。助っ人はこれで5試合連続安打と好調だ。

○…原口が今季初の猛打賞で気を吐いた。「5番一塁」で出場。2、4回には九里から、8回には矢崎から全て左前打をマーク。8回の一打はマルテのタイムリーを呼んだ。3安打は19年9月4日DeNA戦以来3年ぶり。引退を発表した糸井については「すごくプロフェッショナルな部分を感じていた。長くレギュラーでやってきた野球に対する姿勢、練習への持って行き方は近くで見ていた。みんなに慕われてるし、尊敬しています」と感慨深げだった。

○…4番大山は中前適時打でしぶとく2戦連続打点を記録した。2点を追う5回1死一、二塁、九里の外角低めスライダーに食らいつき、二遊間を破った。「チカ(近本)が粘ってつないでくれましたし、まずはなんとか1点を返したいと思って打席に立ちました」。3戦連続安打で踏ん張っている。

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