ロッテや阪神などでNPB97勝を挙げ、関西独立リーグの兵庫でプレーする久保康友投手(42)が今季最終登板の先発に臨み、最速144キロをマークした。1回に被弾するなど、3回2失点も投球技術が光った。2回に持ち味を発揮した。無死一塁で往年の「超速クイック」を披露。捕邪飛、フォークで空振り三振。直後に右前適時打を浴びたがタフネスぶりは健在だ。

「まだまだちゃんと練習したら(140キロ台)後半くらい出るかな。楽しく気持ちよく投げて、気持ちよく打たれました」

久保は異例の「逆オファー」で昨年12月、同球団に加入していた。DeNAを退団後、18年から米国、メキシコと海外でプレーしたがコロナ禍で渡航できず、20、21年は無所属だった。昨年11月中旬に自ら球団に連絡を入れ、独立リーグ入りを決めた。昨年12月には「いまだに現役かどうかも自分自身よく分かっていない。自然体でずっとやってます」とも話していた。8月は北海道ベースボールリーグの富良野ブルーリッジにレンタル移籍していた。

元西武、レッドソックスなどの松坂大輔氏(42)と同学年で、NPBではソフトバンク和田毅投手(41)が唯一、プレーする。久保は社会人・松下電器からのプロ入り時「松坂世代最後の大物」と騒がれ、いまなお、トップリーグを目指す若者に交じって汗を流す。

「知らない環境に飛び込んで面白い。(相手打者は)みんな目の色を変えてくる。向こうにとって(打てば)自信になりますから」

この日はナイターでの一戦だった。同時間帯には、阪神で5年間、同僚だったオリックス能見篤史投手兼任コーチ(43)の引退試合が行われた。かつての先発ローテーションの盟友に、ねぎらいの言葉を贈った。

「(引退表明して)すぐにメールを送りました。『お疲れさまです』と。『ありがとう』と返ってきました。最後まで自分のやり方がブレなかった。僕も能見さんも細かったけど、トレーニング方法が全然、変わらなかった。投球スタイルがね。プロに入ったらいろんな投手がいる。憧れとかね。マネて、自分と違うスタイルで(筋肉を)つけたりする。あの人、全然変わらなかった。自分を最後まで貫いていた。僕とかは、もっとよくなりたいという欲望があるから、失敗しようがとりあえず飛びつく。あの人、全然、飛びつきもせんかったですね。いろいろ試したくなるものなんです。もっとトレーニングをして、太らせてえげつない球を投げたいなとか。基本的に、向上心って、そういうことですよね。能見さんは『俺は俺やし』と。憧れとか、変化を起こそうという気がないのかなと。体格が表していますよね」

これからも、それぞれの道をゆく。久保は来季も現役続行する。「基本は海外でやって、刺激をもらって疲れたら日本でやってもいい。自分の年齢とレベルに合わせたリーグでやればいい」。これまでも米国やメキシコで、見たことのない風景や価値観に出合ってきた。人生は旅だ。異色の右腕は、自分らしい生き方で歩んでいく。【酒井俊作】