「2022JERAクライマックスシリーズ セ」が今日8日から開幕する。本拠地でのファーストステージ阪神戦に臨むDeNAの先陣を切るのは、今永昇太投手(29)。今季チームトップタイの11勝(4敗)を挙げ、防御率2・26と抜群の安定感を誇る左腕が、9月25日ヤクルト戦(神宮)での村上との真っ向勝負の裏側、そしてCSへの「真っすぐ」な思いを語った。【取材・構成=久保賢吾】

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意識の変化が、今季の「進化」の土台となっている。その象徴的なマウンドが、9月25日ヤクルト戦だった。サヨナラ負けを喫し、目の前での胴上げを許したが、今永は「逆転の発想」から7回を無失点に抑え、56号がかかっていた村上も、真っ向勝負で3打数無安打2三振に封じた。

今永 僕の中では、村上選手の56号とヤクルトの優勝がセットだなと思っていたので、逆の思考で、村上選手に56号を打たれなければ優勝は遠のくんじゃないかなと。自分の気を楽にする思考ではあるんですけど、まず56号を打たせないことを考えて、逃げずにしっかり勝負しにいきました。

1回2死一塁の第1打席はカウント1-2から、外角高め152キロの速球で空振り三振。3回2死二塁では、変化球で追い込んでからの高め真っすぐで一ゴロ。6回2死走者なしの第3打席は、カウント2-2から152キロの直球で空を切らせた。いずれも勝負球はストレートだった。

今永 村上選手はもちろん真っすぐも強いんですけど、変化球を打つのが得意な選手。今の僕の変化球と真っすぐではどっちが勝負にはいいのかなっていうのを考えて、真っすぐを選択しました。

マウンド上で自身を追い込みすぎる姿はない。相手を冷静に分析し、打者との対戦、その1球1球だけに集中する。だから、今季の今永は、息詰まる投げ合いでも周囲には楽しんでいるようにさえ映る。

今永 フォームがどうとか、ボールがいってないからどうとかっていう考えは一切なくて、対自分ではなく、対相手になっているから、そういう(楽しむ)感情が生まれたのかもしれないです。

意識の変化が集中力を研ぎ澄ませ、結果につながる好循環。6月7日の日本ハム戦ではノーヒットノーランを達成し、後半戦は8月に5戦5勝をマークするなど7勝1敗、防御率1・54と無双だった。

今永 (9月25日の)ヤクルト戦もそうでしたけど、試合に入りこんで、試合に没頭していると、いい意味でいろんなことを忘れられる。そういう精神状態に持っていけば、おのずとパフォーマンスは上がるということに気付きました。

CSでは通算6試合に登板(3先発)し、0勝1敗、防御率6・19。CSを「特別な試合」と位置付けていた昨年までなら重圧を感じるかもしれないが、今は、そんな意識は全くない。

今永 前までは「CSは完璧な投球をしないといけない」って思ってたんですけど、そうじゃないなと。意味づけって言葉を結構使わせてもらうんですけど、自分がどんなマインドで投げていても、周りの人が勝手に(その登板に)意味づけをしてくれる。だから、自分がチームを背負って投げるとか思う必要はないのかなと。例えば、ペナントレースの10試合目とCSで、何かすることが変わるのかと言われたら、何も変わらない。点を取られてもいいし、ベストピッチングをする必要はないって考えだして、それが後半戦のいい投球につながったので、CSもそれでいいんじゃないかと思います。

ただ勝つためだけに投げる。阪神とのファーストステージから、再スタートする日本一への道。初戦を任される左腕が、その「真価」を証明する。

○…この日の今永は、キャッチボールやランニングで軽めの調整を行った。シーズン終盤は中5日が続いたが、8日阪神戦は中6日で迎える。「リカバリーもしっかりできて、いい食事と睡眠を心掛けたので、コンディションはものすごくいい」と万全だ。夏には17連勝を記録した本拠地開催。「見えない力がこれほどあるんだと選手全員、気付かされたと思う。明日も自分の力以上のものを出せると思うので、感謝の気持ちを伝えながら、感動してもらえるような投球をしたい」と意気込んだ。