ソフトバンクから育成ドラフト12位指名された金沢・飛田悠成内野手(17)が7日、横浜市の同校で宮田善久スカウト、松本輝スカウトから指名あいさつを受けた。

藤本博史監督の直筆サインボールをもらい、球団の帽子をかぶせてもらうと「小さい頃から夢だった、プロ野球になるという実感がわいてきた。(指名を受け)最初はまさか自分がという気持ちがあった。一番はうれしくて、もう1つはホッとしました」と喜びを語った。

プロ野球は、高校2年冬まで遠い夢だった。浦島丘中学時代は、元ヤクルトの渋井敬一監督が指揮する緑シニアに所属も、控え遊撃手。「目立った選手ではなかった。部活も勉強も頑張ろう」と、プロ野球選手を1人も輩出していない、野球推薦もない、進学校の横浜市立金沢高へ進んだ。駅から近く、公立にしては野球専用グラウンドなど、環境が整っていたからだ。高校通算本塁打は「6本か7本」という遊撃手として、部活は午後7時には下校し、大学進学を目指して勉強していた。

転機は昨年の冬に訪れた。名門、横浜高校出身の吉田斉監督(37)には、選手のキャッチボールが物足りなく見えた。基礎から教えると、飛田が「どんどん良くなった」。横浜高では成瀬善久(元ロッテ、ヤクルト)や荒波翔(元DeNA)と同期で、1学年下には涌井秀章(楽天)石川雄洋(元DeNA)がいた。プロに行った元同僚たちと比較しても、低めに投げた球の伸びに素質を感じた。投手の練習をさせると、133キロだった最速が、わずか半年で141キロに伸びた。「まだ投手の投げ方をしていない。もしできれば、プラス5キロは出る。素材はいいと思います」。投手としてのプロ入りを視野に入れ始めた。3月下旬には、「うわさを小耳に挟んだ」というソフトバンク松本輝スカウトが同校を訪れ、極秘視察していた。

春季神奈川県大会の4回戦で、遊撃手だった秘密兵器がベールを脱いだ。公式戦初先発した飛田は、強豪の桐光学園を相手に8回で5失点ながらも、9三振を奪って完投した。吉田監督は「スライダーは桐光もバットに当たってなかったです」と証言した。桐光学園は、この大会で優勝している。投球がソフトバンク以外のスカウトの目にも触れた。7球団が内野手として興味を抱いており、パ・リーグのある球団は投手としても注目したが、ソフトバンク以外は調査書を同校に送るまでには至らなかった。

高校3年の夏も、基本は1番遊撃手だった。投手としては4回戦の湘南工大付戦で1/3回、5回戦の慶応戦で2回を投げて3安打3失点。救援で2試合合計2回1/3を投げただけ。進学校としては神奈川で5回戦進出は立派だが、全国的には注目を集めることなく終わった。

横浜国大を目指して勉強していると、ソフトバンクから調査書が届いた。ドラフト前、両親と話し合った。同校の進学率はほぼ100%だ。当然、進学を薦められたが「小さい頃からの夢。携わってきた方への感謝もある。プロに行きたい」という気持ちを伝えると、納得してもらえたという。

松本スカウトは、初めて飛田を視察した際の衝撃が忘れられない。「彼はショートを守っていた。投手としてすごい球を投げると聞いていたが、遊撃から一塁への送球を見て『これは投手だな』と思った。すごく楽しみ。140キロは超えるなと思いました」。飛田は高校入学後に、身長が20センチも伸びて184センチとなった。3年夏の大会を終えてから、8キロも体重が増えて83キロになった。「素材がいい。手も大きいし、普通の公立のトレーニング環境でこれだけ成長している。肩も使い減りしていない。それでいて140キロを超えている。伸びしろしかない。投手として覚えることもある。フォームを固めれば、自然にスピードはもっと出る」。球団自慢の筑後の施設に、来季は4軍創設で実戦環境も整う。3年後に大きく成長する姿を描いた。

投手練習開始から、わずか1年でプロから指名された。まだ変化球もカーブ、スライダー、カットボールと同系統しかない。あこがれは、同じく無名高校からソフトバンクに育成枠で入団した千賀滉大投手。「育成から球界を代表する投手となった。まずは出力を上げて、1軍で活躍できるようになりたい」。無事に入団すれば、同校からは初のプロ野球選手誕生となる。「自分がこの先、金沢高校を背負っていく。恥じない成績を残す」。同校のOBにはEXILEのHIROもいる。千賀のように日本を代表する投手となって「お目にかかれたら」。大きな目を輝かせた。【斎藤直樹】

◆飛田悠成(とびた・ゆうせい)2005年(平17)3月13日生まれ。神奈川県出身。小学3年からポルテ野球教室で野球を始める。小学4年で寺尾ジャイアンツに入団。遊撃手と捕手を務める。浦島丘中学時代は緑シニアに所属。184センチ、83キロ。右投げ左打ち。趣味は映画観賞と音楽鑑賞。お気に入り映画は「トランスフォーマー」で音楽はK-POP。家族は父、母、妹。

宮田善久スカウト「3年後には150キロを投げる。4月にブルペン投球を見て『すごいな』とびっくりした。あの真っすぐを見たら、エンジンの大きさが魅力。ベースとなる真っすぐがあるだけに、あと枝葉があれば戦える」

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