日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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NPBとJリーグが合同開催していた「新型コロナウイルス対策連絡会議」が11月28日をもって解散した。第1回の20年3月3日から足掛け3年、のべ68回の会合が行われたことになる。

もっとも難しかった決断について、NPBコミッショナー斉藤惇は「興行なのでお客さまを入れないで真っ赤(赤字)になっていいということはない。でも政府はノー観客という。非常に悩んだ」と打ち明けた。

カタールからリモート参加したJリーグ・チェアマンの野々村芳和は「ビジネスと興行、コンペティションの間でどうバランスをとるか、すごく難しいところだ」と見解を示した。

20年は開幕が約3カ月遅れの6月19日にずれ込んだ。143試合制が120試合制に短縮、史上初の無観客開催を強いられた。21年は有観客も制限付き、9回打ち切り制を導入。22年は3年ぶりに入場制限が全面緩和された。

NPBの総括によると、3シーズンで12球団の選手、監督、コーチら関係者が受けた定期検査は13万2735件。感染拡大による陽性者は計1132人だった。ここにも経費がかさんで、球団経営が揺らいだ。

会議の座長だった東北医科薬科大・賀来満夫は「わたしたちも最初は手探りで、どうやっていいかわからない、判断できなかった」と振り返った上で「コロナはまだ終わっていない」と言い切る。

今季1試合平均入場者の2万4558人は、過去最高だった19年比21%減まで持ち直した。20年の6699人(同比78%減)から復調気配も先行き不透明。応援も拍手はOKだが、声出し、鳴り物、ジェット風船も禁止されたままだ。

また球場によっては取材記者の入場制限が続いている。“ぶらさがり”は厳禁、監督は代表取材が多く、選手は対面もあるが、電話、オンライン中心。スタンドで席を空けずに熱狂する光景と取材体制は対照的だ。

オンライン取材は重宝する面もあるが、お互いの緊張感欠如につながる。今後の取材は「変える」「変えない」の分別を間違うと、長い歴史のプロ野球といえども、ひいては新鋭の他競技の人気に追い越される危険性をはらむ。

「コロナとの共生」に向けて、改めてガイドラインが構築され、次のステージに突入する。この3年間の蓄積を無駄にしないためにも、納得のいくエビデンスを示したルール作りに期待したい。(敬称略)