アレ采配や! 開幕3連勝や! 阪神岡田彰布監督(65)が鋭い勝負勘を発揮し、貴重な追加点を演出した。

2点リードの8回2死一塁。一塁走者の中野が盗塁に成功するや、1ストライクから原口文仁内野手(31)を代打で起用。チーム今季初本塁打となる1号2ランが飛び出し、粘るDeNAを突き放した。ブランクを感じさせないタクトで、これ以上ないスタートダッシュを切った。

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岡田野球のすごみが凝縮された8回の攻撃だった。2死走者なしから中野が四球で出塁。DeNAのマウンドはモーションが大きい左腕エスコバー。岡田監督は盗塁のサインを出した。「1球目にいってくれたらよかったけど、けん制にひっかかったけど、まあ何とかね」。1ストライク後の連続けん制の3度目で、中野は誘い出されたが迷わず突き進み二盗も成功。

すると指揮官はベンチを出た。島田の打席の途中で代打原口を告げた。「二塁にいったら、(代打で)いくと言うてたんよね、原口にはね」。代打の切り札は自身1球目となる154キロ直球をとらえ、左翼席へたたき込んだ。チーム今季初本塁打となる1号2ランで、リードを4点差に広げた。

緻密に計算されたタクトだった。左打者の島田を打席に立たせることで、捕手は二塁に送球しづらい。指揮官はエスコバーの心理も読んだ。「ランナー気にせんと、このバッターやったら抑えられる(から打者集中と)。ピッチャー心理なら思うんちゃう。あそこで先に原口いってもうたら、だいぶ違ってくるわな」。相手の警戒心を緩め、盗塁をアシスト。

「2ストライクでも代えてたよ。いいやんか、人の三振になるんやから」と笑った。「速い直球をとらえられるのは原口だし、昨日のお返しをいかなあかん。昨日も紙一重よ」。前日1日に同点の8回1死二、三塁で代打起用し、エスコバーの直球に三邪飛と凡退。球筋を見ていた原口に、やり返すチャンスを与えた。

前日は投手8人を起用したことで、この日は2連投の守護神湯浅、浜地に休養を与える予定だった。だからどうしてもほしかった追加点。根拠の詰まった2点で、DeNAに大きな打撃を与えた。指揮官は言う。「(采配が)当たってと言っても、オレにしたら普通のことやろ。こんなの。点取りにいくんやからさ。俺はそう思ったよ」。就任時に掲げていたベンチで点を取る野球。有言実行で、開幕3連勝へ導いた。【石橋隆雄】

◆打席の途中で代打に立っての本塁打 近年では10年4月9日のロッテ-西武戦で、1回1死一、三塁の場面で福浦が自打球を右ヒザに当て退場。代打で出た神戸が3ランを放った。また19年8月24日の巨人-DeNA戦11回無死二塁、巨人の田口がカウント2-0となった時点で代打に起用された石川が、サヨナラ2ランを放った例がある。

○…1ストライクから代打出場した原口がひと振りで満点回答した。「同じ投手、球筋は昨日見ていた。(やり返せという)意味も含まれているのは自分でも思っていました」と、うれしそうに笑った。ブルペン陣の負担を軽減させる1発に「少しでも点差を広げた状況で投げさせることができてよかった」と納得の表情だった。

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