オリックス山下舜平大投手(20)が、2度目の登板でプロ初勝利を挙げた。

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オリックス山下は、たった1つの変化球で20年のドラフト1位に指名された。高校時代の恩師、福岡大大濠の八木啓伸監督(45)は「大投手になりうるロマンがあった」と才能を見いだし、異例の指導法に着手した。

入学当初の山下は直球、カーブ、チェンジアップ、スライダーを投げた。1年秋。八木監督は「もうスライダーとチェンジアップは投げなくていい」と制限をかけた。意図は明確。「カーブだけになれば、真っすぐを磨かないといけない。私は舜平大にもっと真っすぐにこだわりを持ってほしかった。スライダーやチェンジアップでかわすようなピッチャーにはなってほしくなかった」。八木監督と山下のルール。最速158キロの直球は、高校時代が原点にある。

卒業まで、練習もカーブだけに制限した。分岐点は2年秋の11月。招待試合で大阪桐蔭と対戦した。5イニングを投げ、15人から12個のアウトを三振で奪った。「舜平大と2人でやってきた取り組みが、やっと成果として出た試合」。高校野球の“王者”を相手に奪三振ショー。4年半前になるが、八木監督は鮮明に覚えている。

ドラフト前からNPB12球団が山下に注目していた。直球とカーブしか投げない高校生に、だ。八木監督は「スカウトの方は『カーブしかないのが逆に魅力だ』と。私もそれでいいと思ってました」。今でこそ明かせる、ドラ1指名の理由。一貫した八木監督の指導が、剛腕・山下舜平大の礎を築いた。【只松憲】