ソフトバンク川瀬晃内野手(25)の奇襲が効いた。2-1の5回。2死満塁で西武森脇の2球目にドラッグバントを試み、二塁方向へ転がした。執念のヘッドスライディングで適時内野安打。「森ヘッドコーチからも『チャンスがあったら狙いにいっていい』と言われた。一塁手も(位置が)下がっていたので勇気を持って」。貴重な3点目を呼び、勝利を決定づけた。

2アウトでは異例の攻撃だった。失敗すれば平凡な内野ゴロ。直前に電光掲示板に映し出された自身の打率2割2分9厘の数字が目に入った。「2球目に入る前に打率を見て、確率があるのはバントだと思った。打率を確認して打席に入って良かったです」。自虐を交えて笑顔だった。大分商から15年ドラフト6位で入団したプロ8年目。若武者の活躍に藤本博史監督(59)も「すごくデカい1点だった。川瀬の勇気。素晴らしい勇気だった」と、ほめちぎった。リードを2点に広げ、盤石の継投で逃げ切り、カード勝ち越し。2位の座を守った。

お立ち台で川瀬は言った。「このチームはスーパースターばっかりですけど、ひとりぐらいこういう地味な選手がいてもいいと思ってます。まだ試合は続くので、泥臭くやっていきたい」。4試合連続スタメンでその間の打率は3割8分5厘。開幕二塁スタメンだった牧原大は、故障から1軍復帰が間近。川瀬は「レギュラーとは1ミリも思っていない。与えられた場面で結果を出せるように」と締まった顔つきで帰路についた。【只松憲】

○…中村晃が13試合ぶりの猛打賞と泥臭い決勝点を挙げた。2打数2安打で迎えた同点の4回1死二、三塁。西武隅田の外角に落ちるチェンジアップに食らいつき、遊ゴロの間に勝ち越し点が入った。8回には中前打。この日の「ピンクフルデー2023」は、乳がん検診を啓発する「ピンクリボン運動」も兼ねており、チャリティー活動を行っている中村晃は「乳がんで苦しむ人や、亡くなる人がひとりでも少なくなってほしい。ぜひ今日を機に検診に行ってください」と呼びかけた。

○…藤井が5回1失点でチームトップの4勝目を挙げた。4四死球と制球に苦しみながらも、失点は4回長谷川に許した中犠飛のみ。粘りの投球で勝利を呼びながらも「もう少し長いイニングを投げないといけないし、もっといい投球をしないといけない」と反省も忘れなかった。

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