近大が関大との直接対決を制し、2季ぶり49度目の優勝を飾った。

無傷の2連勝しか逆転Vの目がなかったが、首位関大を2勝1分けで退けた。最優秀選手には近大の主将、坂下翔馬内野手(4年=智弁学園)が選ばれた。6月5日開幕の全日本大学選手権(神宮、東京ドーム)では福井工大(北陸)と対戦する。

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9回の守りに就いた主将の坂下翔馬内野手(4年=智弁学園)は遊撃の位置でもう泣いていた。開幕3連敗から始まった苦しすぎるリーグ戦。終了の瞬間、坂下はその場で泣き崩れ、少し遅れて仲間が待つ歓喜の輪に加わった。

「信じていれば何かが起こると思っていました。最高の試合でした。最後は試合経験の少ない下級生が点を取ってくれた。このチームの強みです。これまでうまくいかないことが多くて、負けたら全部自分のせいだと思っていました」

智弁学園で主将を務め、3年夏の甲子園後に結成されたU18日本代表でも主将を任された。ロッテ佐々木朗希(大船渡)ら、そうそうたるメンバーの先頭に立ち、韓国で世界と戦った。

強烈なリーダー肌で大学でも当然のように主将になった。だが、そのストイックさゆえに拒否反応も少なくなかった。甲子園を目指した高校時代と違い、大学野球では選手によって目指すものにも違いがある。

「毎日キレていました。うまくいかなくて、気付いたら後ろに誰もついてきていなかったこともありました。僕は1人で考えてやってしまうタイプ。でも河野や寺沢が僕のことをよく分かってくれて、みんなに言ってくれました」

副主将の河野大地内野手(4年=大阪桐蔭)や寺沢孝多投手(4年=星稜)が間に入りクッション役になった。河野は「毎日、どのチームよりもピリついていたと思う。あいつは突っ走っちゃうので。仲良しこよしでは勝てないとずっと言ってきて。でも勝ったことで報われました。坂下が主将でよかったとみんな思ってくれている」と晴れやかに振り返った。坂下も「人によって言い方を変えたり、考えながらできるようになりました。大学で主将をやって、勉強になりました」と照れ笑いした。

熱い性格面に高校2年時から注目していたという近大・田中秀昌監督(66)は「あのやんちゃさですよね。勝って泣いて、負けて泣いて。U18でも韓国に負けて泣きじゃくっているのをテレビで見ました。今の時代、ああいうタイプはなかなかいません」と笑みをこぼした。

身長165センチ。全身をくるまれるように巨大な優勝旗を手にした。打率4割1分9厘でリーグMVPに輝いた。「サイズじゃなくてハートのデカさ。野球をしながら、それを一番思っています」。近大の小さなファイターは誇らしげに胸に手をやった。【柏原誠】