ヤクルトがついに連敗地獄を脱した。「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム3連戦最終戦。引き分けをはさみ12連敗中だったチームを高津臣吾監督(54)が大なたを振るい、2人の神様に息吹を与えて18日ぶりに勝利した。「主砲の前にランナーをためる」意図で“代打の神様”川端慎吾内野手(35)を5シーズンぶりとなる3番スタメンで起用し、5打数3安打1打点の猛打賞。“村神様”こと村上宗隆内野手(23)がそれに呼応し、決勝打と10号2ランの3打点で勝利に貢献した。

「寝られなかったですよ」。駐車場に続くエスコンフィールド地下1階のコンコースで、高津監督の12連敗の苦悩がにじみ出た。「みんな口に出さなかったけど、つらい時間を過ごした。悔しい思いをして若手もベテランも外国人もみんな成長していくのだと思う」と少しだけ表情が緩んだ。

暗く長い連敗のトンネルを抜け出す大なたは、川端だった。「ムネの前にランナーを置いて、バッター村上で相手にプレッシャーをかける」意図を川端が見事に体現した。指名打者で今季初スタメン。3番でのスタメン出場は18年10月4日阪神戦(甲子園)以来5シーズンぶりだが「5打席全てで代打に行くような気持ちで」集中力を高めた。

作戦は初回から機能する。1死一塁で日本ハム先発加藤貴から二塁への内野安打を放つと、続く4番村上が先制となる左前適時打。3回1死でも川端は仕事をした。

加藤貴の初球93キロのスローカーブに惑わされることなくピッチャー返し。再び二塁への内野安打で主砲につなぎ、村上はカウント2-2から加藤貴の外角低めに沈んだ130キロカットボールを、歯を食いしばりながら左中間席に5年連続2ケタ本塁打となる10号2ランをたたき込んだ。

前年優勝チームが初の12連敗という苦境の中、組織を向上させるため高津監督はリーダーとしての振る舞い方を熟考した。「正直な心を伝えてしまうと選手が重くなってしまう。できるだけ普段通り振る舞うようにした。しっかり、どっしりと。しんどいのは絶対に選手の方。そんな姿は見せまいと思っていた」と耐え難きを耐えた。

山田を1番に起用したのも主砲の前に走者を置くため。7回2死満塁でも川端は適時中前打を放ち「追加点が欲しい場面。形は何でもいいので必死に食らいついた」と5シーズンぶりの猛打賞。打率を4割5分5厘まで上げ、村上も「いつも通りよく打つなと見てました」とたたえた。“W神様”の3、4番。苦境の中から指揮官が必死で光明を見いだした。【三須一紀】

○…川端の妹友紀が日本代表として出場した女子野球アジア杯決勝(香港)で台湾を8-3で下し、3連覇を飾った。友紀は4番一塁手で4打数1安打。川端は妹の吉報に「ちょくちょくオヤジから連絡があった。良かった」と喜び、きょうだいで最高の日となった。