両軍計24奪三振の投手戦を虎が制した。阪神才木浩人投手(24)が初の9回完封勝利を飾り、ロッテ先発佐々木朗に投げ勝った。最終回には2死から連打で一打同点のピンチを招いたが、最後は自身最多12個目の奪三振で締め、今季4勝目を手にした。わずか3安打しか許さない快投を、岡田彰布監督(65)も絶賛。チームは今季の主催デーゲームで13戦無敗となり、セ・リーグ首位独走態勢を再び固めにかかった。

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最後はヒヤヒヤだった。

2点リードで迎えた9回2死。「あと1人コール」が甲子園を包む中、才木はこの日初めて連打を浴びた。2死二、三塁。一打同点の場面で自身最多12個目の三振を奪うと、白い歯をこぼし固く右拳を握った。

「最後すごいドキドキしたんですけど、なんとか0で終わって良かったです」

22年9月1日広島戦で6回途中降雨コールドゲームの完封勝利を挙げているが、9回を投げきっての完封は初めて。2時間26分の緊張が解けた瞬間だった。

ロッテ佐々木朗もさすがの投球内容だった。6回を10奪三振1安打で1失点。実際に打席で162キロの速球を体感した才木は「くそ怖いっす」と苦笑いするしかなかった。5回まで両軍合わせて1安打の投手戦。あくまで目の前の1球1球に集中した。

「自分のピッチングに集中というか。自分のリズムで野手にテンポ、リズムを持ってこられるように、という意識が第一でした」。中盤に4者連続三振を奪い、許した安打はわずか3本。1歩も引かない投球が援護を呼び込んだ。

グリーンユニホームを着用した一戦。心には赤色の闘志を宿していた。今季からグラブに加え、打撃手袋、防具もレッドカラー。きっかけは右肘のリハビリ期間中、坂本から勧められた体の動きと「色」の関係性が紹介された本だった。特定の色を見ながら柔軟を行うと測定値が上がるという内容。最も可動域が広がったのは「元々好きで」高校時代からグラブに使用する赤。体が動く順に赤、黄、白、緑、黒、青色だった。

「合う色を集めすぎても逆に良くない。赤ばかり取り入れても体が動きすぎて、逆にバランスが取れなくなる」。今季ここまでバッテリーを組む梅野のミットは青色。「梅野さんのミットが赤とかだったら、逆に体が動きすぎてるかも」。赤色の道具に青色ミット、中間色にあたる緑色のユニホーム。カラーのバランスも味方につけての快投だ。

岡田監督も「一番安定してる」と絶賛。今季4勝目でチームに今季最多タイの貯金18、交流戦貯金1をもたらした。「これでおごらず、次に向けてケアとかをしっかりやって挑めるように」。“日曜日の男”は油断を見せず白星を積み上げる。【波部俊之介】

 

▼阪神才木が22年9月1日広島戦(甲子園)以来、2度目の完封勝利。前回は6回降雨コールドゲームだったため、9回完封は初めて。阪神投手の交流戦完封勝ちは16年6月2日楽天戦の藤浪以来7人目、11度目。11度のうち12奪三振は最多となった。才木は101球だが、9回2死まで94球。100球未満で2桁奪三振完封なら、セ・リーグでは70年4月12日ヤクルト戦の江夏(阪神=99球、12奪三振)以来53年ぶりとなっていただけに惜しかった。

▼才木はロッテ佐々木朗との先発対決で完封。佐々木朗(通算38試合目)と投げ合って完封した投手は初めて。

▼阪神の今季完投シャットアウト3度は12球団最多。過去に村上が4月22日中日戦、伊藤将が同27日巨人戦でそれぞれ成し遂げ、才木がこれに続いた。

▼継投によるものも含めたチームの完封勝利は8度で、ヤクルト9度に続き12球団2位タイ(他にオリックスも8度)。