阪神岡田彰布監督(65)がチームを18年ぶり6度目のセ・リーグ優勝に導いた。圧倒的な強さを見せつけた今季のタイガース。もっとも注目を集めたのが、岡田監督の采配力だった。かつて日刊スポーツで「岡田番」を務め、岡田監督の「ゴルフの師匠」でもある町野直人氏(69)がその秘密を語った。

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1979年(昭54)のドラフトで岡田彰布監督は、6チーム競合の末、相思相愛の阪神に入団した。その時、私は阪神担当を命じられ「岡田番」となった。それ以来の付き合いだから、もう44年もの歳月となる。

監督が新人王に輝いた翌年の80年オフ。甲子園球場近くの「虎風荘」から少し歩いた所のゴルフ練習場に、2人はいた。私は大学時代ゴルフ部で、少々腕に覚えはあった。私のクラブを持って、監督に手ほどきしたいと考えたのだった。

ドライバーを打ってみせると「ほーっ」と感心してくれた。グリップはアドレスは、とその時もっていた

あるだけの知識を授けた。ところが、今でも監督は「ゴルフの先生は町野さんやから、うまくならへんわ」と言う。

「いや、野球の膝を使って打つクセが、そのままゴルフでもやるからや」と反論したい気持ちを抑えて、3歳年上の私は「そうやなあ」とグッと我慢する。

私は2年ほどでゴルフやボクシングの担当記者になり、プロ野球とは疎遠になったが、監督はゴルフが大好きで趣味となったため付き合いは続き、いろんなコンペやプライベートで、監督とのゴルフは数百ラウンドを数える。

4人でやるゴルフやマージャンはその人の性格や人柄が分かる競技といわれる。「一献の杯より、1回のゴルフ」で仲良くなれるとも、私は思っている。

アマチュアのゴルファーで、最大のほめ言葉は「この人ともう1度ゴルフをしたいと思わせる人」である。まさしく、監督がそういう人なのだ。

1打1打に一生懸命で、決して投げない。同伴競技者に冗談は言うが、嫌みは言わない。キャディーさんに文句も言わない。ごまかしなどもちろんなく、きれいなゴルフをする。目配りや気遣いもできる。

いわゆる、周りが見えているのだ。阪神の監督に65歳の年を重ねてからなったことにより、視野の広さにより磨きがかかったことも優勝の一因であったと思う。

一緒にプレーしていて、感心させられるのは、頭の回転の速さと、数字への強さである。同伴競技者のスコアをしっかり把握していて、計算もしてくれるし、打順を間違うと指摘もしてくれる。この資質があるから、代打や代走を出したあとの守備位置や打順のことなど、まさしく的を射た采配につながる。

最後に「勝負強さ」だ。スコアは90前後の腕前だが、2メートルくらいのいわゆる「入れごろ、外しごろ」の“クラッチパット”はほとんど入れてくる。これは、もって生まれたものだろう。

勝負の代打、勝負の投手交代など、今シーズンはことごとくはまった。この「勝負強さ」こそ、監督業を成功させる最大の要素なのかもしれない。

ゴルフから見る、岡田監督の考察は以上である。さらに、もうひとつ監督がなぜ優勝を手に入れたかを、勝手に思うことがあるので、付け加えさせてもらう。

今季、私は勝利した時だけメッセージを監督に送り続けた。試合の感想とねぎらいだ。負けた時は、悔しさを思って控えた。読んではくれているが、当然返信はない。1度だけ、采配について書くと「その通りです」と返信がきて、有頂天になった。

こんな話を監督をよく知る知人にすると、監督の早大時代の恩師・石山建一氏も毎試合メールしているらしいが、返信はないらしい。読みはするが、大量に来るメールの返信はしないとするのが、監督の考えだろう。

ここに、こんなことを思う。監督はみんなに平等なのだと。今、はやりの「忖度(そんたく)」などない。恩師も知人もみんなフラットなのだ。

この監督のポリシーこそ、ナインにやる気を出させるものではないか。みんなを平等に見てくれている。それだけで、選手は「監督のために」と頑張るのではないか。阪神18年ぶりの優勝は、岡田監督の人柄が引き寄せたと私は思っている。【町野直人】