オリックスが2位ロッテとの直接対決を制して、3年連続15度目のパ・リーグ優勝を果たした。

3連覇は阪急時代の75~78年の4連覇以来、オリックスとしては「がんばろうKOBE」を合言葉に連覇した95、96年を超えて、初めてだ。中嶋聡監督(54)は「負けない野球」を目指し、卓越したマネジメント力を発揮。本拠地の京セラドーム大阪で、5度、宙に舞った。今季のペナントレースは、18年ぶりに優勝した阪神と関西2球団がセ・パを制した。

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照れ笑いする中嶋監督の周りに、自然と大きな輪が出来た。次々に集まる選手たちの手で大きく5度、宙を舞った。「最高です。奇跡のようなつながり方で、そこまで打てるとは思わなかった。全員でつないだと思います」。1年の歩みが凝縮されたような1試合だった。

最後まで結末の分からなかった過去2年とは違う。就任後初のマジック点灯から首位を走り続けた。昨年の連覇、そして日本一。「こうすれば勝てる」。勝つことを追求し、たどり着いた頂点。3連覇へ向かう今年は、中嶋監督の周囲への話し方が少し変わったという。「こうすれば負けない」。シーズンは143試合。負けない野球を貫いた。 監督室には大きなホワイトボード2枚が置かれていた。ひとつには、1年の試合スケジュールがびっしりと書かれている。対戦相手、遠征、休日…。細かい文字で埋め尽くされ、中嶋監督は思いを巡らせる。反対側に置かれた、もう1枚の白板。記されているのは、全選手の背番号だ。「1軍」「2軍」に分かれて並ぶ、見慣れた愛着のある数字たち。ひと目でチームの今を把握する。

今季、出場選手登録を抹消された選手はのべ127人(特例抹消含む)。両リーグ最多の入れ替え数だ。監督室やグラウンドで指揮官が自ら考えを伝える。非情さを表す数字にも見えるが、決して降格への恐怖心は与えない。9度の昇降格を繰り返した西野には、その度に声をかけた。「まだ序盤だから、もう1回しっかりやってきてくれ」。実践できれば、昇格のチャンスが巡ってくる。今月2軍落ちした阿部は「疲れてるやろ?」と声をかけられた。「普通に実力で打たれたと思う。そこは(監督の)優しさですよね」。心配りが胸にしみ、最短10日で戻ると心に決めた。

夏場に2戦連続で被弾し、ベンチでいら立ちを見せた宇田川には「そんな顔するなら出ていけ」と突き放した。その後、ビジターの監督室に呼び「このままだったら終わるぞ」と静かに言った。強烈な一言は愛情の裏返し。不振にあえぐ右腕を目覚めさせた。硬軟自在に言葉を選び、選手を奮い立たせた。

2軍の試合映像は監督室とコーチ室に常に流れ、育成試合に至るまで担当コーチがリポートを書いて共有する。全選手の情報を徹底的に頭に入れ、素早く判断。昇格したばかりの選手を迷わず使う。今季の1点差ゲームは26勝12敗。12球団トップの勝率だ。チーム全員が戦力。「ナカジマジック」のタネは、選手との強い信頼関係にあった。

希代のモチベーターは、今季新たな行動に出た。メンバー表の交換後に行う「2度目の円陣」。4月中旬から自然と、中嶋監督の声出しが始まった。3連覇をつかんだ最後の円陣。「硬くなる? 必要もないし楽しもう。ワイワイいこうよ。!」と送り出した。

95、96年の連覇を知る指揮官が、もう1つ先の景色を見た。次は90年代に西武が成し遂げた5連覇へ。「とてつもない数字だが、チャレンジできるチームだと思う」。教え子たちとなら、きっと実現できる。【磯綾乃】

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