虎のヒットメーカーが最多安打のタイトルへ前進だ。阪神中野拓夢内野手(27)が中日23回戦で今季158本目の安打をマークした。7回に中前打、延長10回には左前打と今季48度目のマルチ安打。157安打だったDeNA牧、中日岡林を抜き去った。開幕からフルイニング出場を続ける不動の2番打者がリーグ優勝決定後も躍動。阪神では21年近本以来となる最多安打のタイトルが現実味を帯びてきた。

中野がバンテリンドームに快音を響かせた。0-0の7回、中日岡林の前に放った中前打で出塁。DeNA牧、岡林の157安打に並び最多安打争いでリーグトップタイに立った。延長10回には藤嶋から左前打。華麗に2人を抜き去った。

「ヒットが出ていること自体はいいこと。貪欲に、打てるボールを打っていければ、ヒットが出る確率は上がる。もっともっと、1球で仕留められるように」

最多安打のタイトルを獲得すれば、チームでは21年近本以来。1、2番コンビで18年ぶりのリーグ制覇を導いた先輩に並ぶ勲章が見えてきた。

ただ、中野の視線は少し違うところにある。

「試合に出続けることが最低条件というか、ヒットを打つことにつながる。けがなく最後まで試合に出ることを意識して、思い描いたヒットが打てれば」

ここまで全136試合にフルイニング出場。143試合、1イニングも休まず出場を続ければ、阪神の内野手では15年の鳥谷以来となる。リスペクトする大先輩に続くことができれば大きな糧になるはずだ。

2番打者として積み重ねてきた「Hランプ」には大きな意味がある。リーグ断トツの打席数を誇る一方、リーグトップの犠打数、すでにキャリアハイの四球数と「つなぎ」に徹した上での、この安打数だ。常に打線の流れを最優先。「そこで大きく崩れることが一番嫌」と、14日にリーグVを決めてからも、その姿勢は変わらない。

ライバル岡林を無安打に抑えた才木には「抑えてくれって、多少は思ってました」と感謝。「あまり意識せず。やるべきことをしっかりとやればいい」と泰然自若だ。延長11回1死一、二塁の好機では見逃し三振に倒れたが、マルチ安打で昨季の157安打を超え、自己最多となる158安打とした。阪神、DeNA、中日ともに残り7試合。チームは今季初、球団史上21度目となる「0-0引き分け」も、仁義なきタイトル争いがさらに熱を帯びる夜になった。【中野椋】

▼阪神選手の狙えるタイトル 獲得濃厚なのが近本の盗塁王だ。現在27盗塁で、2位の中野19盗塁に8差をつけて独走。自身4度目のタイトル獲得は間違いなさそう。村上の防御率も、2位以下を大きく引きはなしており、規定投球回数をクリアすれば確実。中野が狙う最多安打は激戦だ。この日2安打して牧や岡林を抜いてトップに躍り出たが、最後までデッドヒートが続きそう。岩崎もヤクルト田口と33セーブで並んでおり、最後まで気を抜けない。勝率は大竹が13勝してタイトル獲得の条件を満たし、さらにDeNA東に黒星がつく必要があるが、どうなるか?