阪神岡田彰布監督(65)が勝負どころで今季初めて円陣を指示し、ナインの闘志に火をつけた。7回表にまさかのダブルエラーで2点差とされた直後、7回裏の攻撃前に円陣を指示。意気消沈気味だったチームを平田ヘッドコーチの言葉で奮い立たせ、8回の一挙6得点を呼び込んだ。「1年の集大成」と納得した「つなぎの野球」で劇的勝利。3日を休養日として万全の態勢を整え、4日敵地京セラドーム大阪での第6戦で球団2度目の日本一をつかみにかかる。

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7回裏が始まる直前、岡田監督が沈むナインの闘志に火をつけた。「2点目、ああいう感じで入ったからなあ。平田に言うたんよ。『円陣かけえ、気合を入れろ』って」。7回表に中野、森下のダブルエラーでオリックスに2点目を許した。打線も田嶋に無得点に抑え込まれ劣勢ムード。「(円陣は)2回目や今年」。巧みにきっかけを用意し、流れを変えた。

相手に困っていると思わせたくない指揮官は円陣を好まない。今季1度目は6月4日の交流戦ロッテ戦で5回、今岡打撃コーチが集めたもの。岡田監督自身が指示するのは今季初だった。「7回までちょっとふがいなかったんで」。今季最後となる可能性が高い甲子園で、このまま王手をかけられるわけにはいかなかった。

「もう代わると思っとったよ」。無得点に抑えられた先発左腕田嶋が交代した8回、相手リリーフ陣に襲いかかった。「糸原のあれが大きかったな」。無死二塁から代打で左前に落とし、一、三塁にチャンスを広げた切り札をほめた。森下の逆転2点三塁打で生還した近本らをベンチで出迎えた際には感無量の表情にも映った。

「最後の最後にね、この1年の集大成というか、1年間やってきた後ろにつなぐ(野球)というかね。みんなで点を取れたんでね」。14戦連続ノーアーチでシリーズワースト記録を更新しても構わない。つなぐ野球で6得点のビッグイニングをつくれるナインの成長がうれしかった。

3日はNPBが敵地京セラドームでの公式練習を予定していたが、休養を選んだ。先発投手だけが甲子園で調整し、野手やブルペン陣の休養を優先した。「こんな緊張感ある中でずっと休んでなかったからな。ちょっと万全の態勢にしたいしな、あさって。そらみんな気が張り詰めてここまで5試合来たわけやから」。

激闘につぐ激闘で疲れ果てているナインは日本一を決めるため、いったん英気を養う。指揮官はお立ち台で「新たな気持ちで、京セラドームで、1年の集大成をゲームにぶつけたい」と虎党に誓った。選手として味わった日本一まで、あと1歩だ。【石橋隆雄】

 

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