無敗の格闘家でボクシングデビュー2連勝を飾った東洋太平洋スーパーバンタム級6位の那須川天心(25=帝拳)が、侍ジャパンの初戦の始球式に登板した。主戦場のリングから、マウンドへ舞台を変えた「神童」は、“故障中”の左から投じた。打席に立ったのは今季限りで現役引退した元巨人の松田宣浩氏(40)。天心はおなじみのトリケラトプス拳のポーズで“威嚇”すると、山なりの軌道で、真ん中低めに決めた。ガッツポーズをすると、松田氏が代名詞の熱男で球場全体と大合唱した。

松田氏は「天心さんが最高なストライク投げてくれたので、最高な空振りをして。初戦なので、侍ジャパンに勢い出たのではないかと思います」と最敬礼。球場全体も大盛り上がりの雰囲気となったが、これにも松田氏は「全ては那須川さんのおかげ。いい共同作業が出来ました」と譲った。天心は「前に始球式をやらせてもらったこともあるけど、その時はすごいバウンドで。かなり気まずい空気が流れたんですけど、今日は良かったですし、事前に教えてもらった通り出来たので良かった」と安堵(あんど)した。

ずばり、作戦は-。松田氏は「(マウンドから)18・44メートルって案外、遠いんですよ。だから少し上に投げろ作戦で練習した、最高に100点でした」とべた褒めすると、天心は「そんなことないです」と謙遜した。18年5月の始球式でのバウンド投球を払拭するために、ボクシングジムで“本業”よりも、力を入れて投球練習に打ち込んだ。「結構やりましたね。ボクシングジムでボクシングの練習より、今回練習していました」と練習の成果が出た。

東京ドームは、昨年6月の「THE MATCH 2022」で、武尊との世紀の一戦で判定勝利した思い出のある場所。「緊張感あって、いい雰囲気で出来た。かましてやろうと、気合入れてやりました」と、格闘技とはまた違う熱気をかみしめた。

サウスポーの那須川は左拳を負傷中だった。9月18日、東京・有明アリーナでメキシコ・バンタム級王者ルイス・グスマン(27)と55・79キロ契約体重8回戦に臨み、2度のダウンを奪って大差の判定勝ちを収めたものの、4回途中に同箇所を負傷。試合直後に受けた精密検査では「左手手根不安定症」と診断されていた。10月28日のトークショーでは「前回の試合中に(左手の)骨を折っちゃって。左手が折れている。それが治るまでは…。ずっと、練習はしているが、左は打てていない」と想像以上のけがだったことを明かしていた。

そんなこともあり、この日の始球式に向けては、利き手ではない右で投球練習に臨んでいた。書くのも右だが、その他は左。初の右投げか、と注目が集まったが、神の左で東京ドームを盛り上げた。負傷を心配する声もあったが「だいぶいい感じに回復してきた。問題なし」と笑顔を見せると「これでオファーきたら、困るな」と冗談を言い、笑ってみせた。

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