最後まで野球大好き小僧だった。引退試合に登板したDeNA森唯斗投手(33)は、後輩たちと食事に出かけてもトークテーマは常に野球。ホテルで少しの空き時間があっても、1人でスマホをいじって時間をつぶすのではなく、後輩を誘って「パワフルプロ野球」に興じる。使うチームは必ず自分が所属するDeNAで、9回には自分自身を守護神で投入するのがお決まり。例え調子が「絶不調」だとしても9回2死から投入して試合を締める。
いつも対戦相手を務める松本凌は「自分自身を使うときに現実と同じ配球してきます。左打者の内角直球の後に内角カットボールとか。『これ詰まるっしょ。そういうことなんよ』と。勉強させてもらってます。本当に野球が好きなんですよね」と苦笑い。間近で感じてきた野球愛はとてつもなかった。
それは現実世界でも同様だ。引退を発表してからもキャッチボールで新球種の習得に励む姿があった。落ち方を変えたチェンジアップを試していたのだ。キャッチボール相手の松本凌に聞く。
「最初に投げたのと2つめはどっちがいい?」
「2番目の方が良いっすね」
「せや。やっと分かってきたか」
「まだ新しいの覚えようとしてますやん。エグいっす」。
野球小僧ぶりは引退試合でも同じだった。ソフトバンク時代に守護神として慣れ親しみ、「パワプロ」でも自らが自らを起用する9回に登板。先頭のヤクルト岩田には投前のゴロをはじいて内野安打とされ「隙がありました」と反省しながらも、1死一塁からチェンジアップで教科書通りの遊ゴロ併殺に仕留めた。渾身(こんしん)のガッツポーズで喜びを全身で表現した。
2点ビハインドだったため、9回裏の攻撃に入ると1点を返してベンチで大喜び。2死一、二塁で打席には同学年の筒香、そして次打者席には森唯が打撃用手袋とエルボーガードを装着して準備。三浦監督は舞台裏をこう明かす。
「試合前に話して今日はやりたいようにやってくれと。9回登板終わって聞いたら、延長に入っても投げますと。『打席も立ちたいです』と言って、アナリストに相手の球筋聞いたりして、打つ気満々でした」
最終的に打席は回ってこなかったが、引退試合を心の底から味わった。悔いがないから感動しても涙はない。
「今日も最後の登板になりましたけど、やっぱりマウンドに上がったら楽しかったです」
最後まで野球が大好きな野球少年のまま、惜しまれつつユニホームを脱いだ。



