代走の切り札、中日樋口正修内野手(27)は、チームの命運を握る“ここぞの1点”のために、準備に準備を重ねる。4日からヤクルト戦(神宮)だが、対ヤクルトは6連勝中。「やるべきことを全うしたい」と樋口は話す。

2年連続開幕1軍も今春は左ひざの後十字靱帯(じんたい)損傷を乗り越え、代走要員としてチーム内の信頼は厚い。なくてはならない存在だ。「代走は盗塁がすべてではなく、ホームにかえってくるまでが仕事です。その一つが盗塁。打球判断もその一部。ホームにかえれなきゃ代走の意味はないです」。

出番は、試合の7、8、9回に訪れる。準備に余念がない。体のケアや早出練習、映像の研究のため午前11時台には本拠地へ。相手バッテリーのクイックや牽制(けんせい)のパターンを頭にたたき込み、「自分が走るならここ」とあらゆるシミュレーションを重ねる。「確かに代走の出番は一瞬だけ。その一瞬で100%のパフォーマンスを」。

8月7日の阪神戦では、1点を追う9回2死一、三塁で一塁走者の石川昂の代走に立ち、相手投手ドリスのバウンドした2球目で果敢に二塁へと進んだ。「あれは想定外でした」と振り返りつつも、「走るだけではなく、少しでもバッターに有利な状態をつくるのも代走の仕事。キャッチャーにプレッシャーを与えて甘いボールを引き出すこともできる」。打者との“心理戦”までをも緻密(ちみつ)に支配する。

技術や判断力を磨いたのはプロ入り後。1年目の途中で支配下を勝ち取り、ファームで技術を吸収、3年目で代走の在り方を学んだ。4年目の今季、「盗塁はできて当たり前」と高いハードルを課している。

足のスペシャリストを志して飛び込んだプロの世界。ナイターの試合前でも体調によって、朝からパーソナルジムへ治療とトレーニングに向かう日がある。周囲に「そんなに必要?」と疑問を持たれるほどの徹底ぶりだが迷いはない。「人の目を気にしなくなったんです。『自分が失敗したら自分の首が落ちるだけ』。準備してダメなら説明がつくので」。緊迫のグラウンドへと飛び出すため、今日も準備は続く。【中島麗】