巨人は24日、朝日新聞が3月15日付朝刊で報じた「巨人、6選手に契約金36億円

 球界申し合わせ超過

 97~04年、計27億円分」の記事に対し、朝日新聞社に質問状を送った。差出人は桃井恒和社長(65)。以下全文。

 3月19日付の回答文書を受け取りました。当球団は、貴社が3月15日付朝刊で「巨人、6選手に契約金36億円」「球界申し合わせ超過」などと報じた記事に対し、選手や球団への謝罪と謝罪文掲載を求めましたが、貴社の回答はまったく誠意のないものであり、極めて遺憾です。つきましては、再度、下記の通り、貴社の認識等について具体的に質問させていただきます。記事は誤った認識の下に書かれ、読者やファンを誤導するものだと考えています。今回は誠意ある回答をいただけるものと思っております。なお、回答は5日以内にお願いいたします。

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 貴社が取り上げた選手の契約は1997~2004年でしたが、当時の最高標準額については、2001年6月の実行委員会において、「これは標準額であり、上限額ではない」という申し合わせが確認されています(特に、その申し合わせ内容は「新人選手とはいえども、優秀と誰もが評価する選手には、その評価に見合った契約金、年俸が提示されていいというのが12球団の一致した考えである」という踏み込んだ内容であった点にご留意いただくようお願いします)。この申し合わせは2007年に「上限」が定められるまで、プロ野球界の共通認識でした。この点については、貴社の板橋洋佳、矢崎慶一両記者の取材に対し、当職らが丁寧に説明したところです。にもかかわらず、最高標準額を超えた契約金があたかもルール違反であるかのような印象を読者に与える記事を掲載しました。事実関係とは別に、貴社は、当時、6選手の契約金が最高標準額を超えていたとすれば、どのような問題があるとお考えでしょうか。

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 2001年6月の実行委員会で上記申し合わせを確認した文書を採択した際、実行委員会の議長だった小池唯夫パ・リーグ会長が「(標準額をオーバーした分を“裏金”とするような)報道があった時に(文書で)反論するのがいい」という発言をしています。当職らは、毎日新聞社代表取締役会長や日本新聞協会会長を歴任するなど新聞界のトップを務めた小池会長が、当時そのような発言をしていたことも丁寧にご説明しましたが、貴社は、小池会長の発言の趣旨をどのように理解したのでしょうか。

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 貴社は、本件記事の見出しで、「球界申し合わせ超過」と表現しています。しかし、「最高標準額は上限ではない」というのが当時の12球団の「申し合わせ」であったことに照らせば、この見出しは明らかに誤報であり、読者を誤導する極めて不適切な表現であると考えます。貴社の考えをお聞かせ下さい。

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 新人選手の契約については、選手育成の観点から、高卒は5年程度、大卒・社会人は3年程度は契約関係を維持することが球界の共通認識となっており、入団契約の際にも、数年間は契約を維持するという認識のもとに交渉が行われている実態をご承知でしょうか。

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 2007年に新人選手の契約金を上限1億円(出来高を含め1億5000万円)と決めた際も、そうした実態を踏まえた議論が行われており、少なくとも最高標準額については入団初年度に支払う金額が念頭に置かれていたことをご存じでしょうか。

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 貴社が取り上げた6選手の契約金額が、仮に「最高標準額」を超えていたとしてもルール違反とはいえないことは前述した通りですが、最高標準額はあくまでも入団初年度に支払う金額に関するルールであるというのが球界の認識であったことを踏まえれば、貴社が取り上げた選手の契約金は「最高標準額」の範囲内です。貴社は、本件記事の中で、「6選手の契約では、1億5000万円を超過する金額について、複数年にまたがって分割払いするとし、各年の出来高条件の一部をクリアした場合に支払われるとされていた」と記載していますが、そのような契約内容であってもなお、問題があるとお考えですか。

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 当球団は、新人選手に2年目以降に支払う出来高払い分については、入団初年度の支払い分とは性質が異なるものであることをより明確にするための見直しを、2001年に行っております。この見直しは、税務当局に自発的に相談した上で行ったものです。貴社は、こうした事実を承知していますか。

 <8>

 当球団は貴社の取材に対し、新人選手の契約金に関するプロ野球界の実態や考え方を正しく理解していただくためにも、事情をよく知るNPBの関係者などにきちんと取材をしていただきたい旨、強く要望しましたが、要望をお伝えした翌日の朝刊に早くも本件記事を掲載されました。貴社は、NPB関係者などに取材はされたのでしょうか。

 <9>

 本件記事に取り上げられた選手6人のうち少なくとも2人については、貴社が契約金として報道した金額を合意した契約はなく、明らかな誤報です。貴社は、何を根拠に各選手の契約金を報道したのでしょうか。

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 本件記事に取り上げられた選手の契約内容は、(1)8年~15年も前のことである(2)選手個人のプライバシーに関わる極めてセンシティブな情報である(3)当時の球界のルールに違反するものではない-にもかかわらず、貴社が選手の実名をあげて写真付きで報道する価値があると考えた理由をお答え下さい。

 <11>

 貴社は、報道の根拠の1つとして「巨人軍の内部資料」を挙げていますが、その内部資料の真偽について、当球団には一切、裏付けを取らずに記事化しました。当球団としては、そうした真偽不明の「内部資料」にのみ依拠した思い込み取材が、誤った報道に結びついたと考えます。貴社は、「内部資料」なるものについて、どのようにして本物であると判断されたのでしょうか。

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 仮に、貴社が入手した「内部資料」が本物(原本のコピーを含む)であれば、それは当球団から違法に持ち出されたものだと考えざるを得ません。情報提供者が、違法な手段で取得した資料に依拠した報道について、貴社はどのように考えていますか。以上