阪神が今季からミズノ社製のボールを主催試合の公式球とすることが8日、分かった。これまでは那須社製を使用してきたが、公式球統一の流れの中で、大部分の球団がミズノ社製を使用している実態も考慮。ボールになじむため、2月1日の沖縄・宜野座キャンプから使用する。ミズノ社製は球界でも最も“飛ぶ球”とされるだけに、甲子園の野球も空中戦へと様変わりする可能性がある。金本や城島らで組む新猛虎打線にとっては追い風となりそうだ。

 阪神が今季の主催試合で使う公式球を、ミズノ社製中心に変更することが内定した。約20年に渡り、那須社製を中心に使用してきたが、12球団で統一しようとする動きも考慮し、変更が決まった。これにより、本拠地甲子園や京セラドーム大阪の野球は、大きく様変わりしそうだ。

 一番の違いは飛距離に出ると見られる。ミズノ社製は1番飛ぶとされ、球界では定説になっている。実際、楽天は07年から前半はゼット社製、後半戦はミズノ社製に変えているが、いずれも後半戦で本塁打数が増加。阪神の場合も当然、打撃陣には強力な追い風となりそうだ。

 特に日本一広い球場と言われる甲子園は、本塁打が出にくい球場だった。事実、昨年のセ・リーグ本拠地別本塁打数は敵味方を合わせて78本で、ナゴヤドームと並んで最少だった。だがある主力野手は、ミズノ社製に変わることで「これまであと少しで入らなかった打球が入ったり、間違いなくホームランは増えると思う」と断言した。

 これは金本、鳥谷、桧山、ブラゼルら浜風(右翼から左翼への風)に泣かされてきた左打者にとっても、大きな朗報だ。あくまで打者と相手投手と力量が前提にあるとはいえ、アーチ増加はファンにとっては最高の楽しみ。今季は城島も加入してよりパワフルな打線になる。本塁打攻勢が真弓阪神の売りになるかもしれない。

 反対に被害を受ける可能性が高くなりそうなのは投手陣だ。当然、被弾する確率が高くなると推測される。だが久保投手コーチは「ミズノは投手の間でも質感がよくて手になじみやすいから、投げやすいという人が多い」と利点を強調する。しっとりした肌触りで指先にフィットする分、微妙な制球や変化などで、思い通りの球が投げられるというのだ。これがズバリとハマる投手なら、新たな武器を手に入れることになる。

 だが飛距離が伸びれば、打者優位は揺るぎそうもない。ある投手は「飛ぶ分、投手の配球ミスは命取りになる。しっかりミズノ球対策を練らないといけない」と警戒感を強める。投手陣は一日も早く手になじませ、野手陣は打球の質感の違いを覚えることも重要だ。

 球団は早速、2月1日の沖縄・宜野座キャンプからミズノ社製で練習することを決めた。オープン戦、京セラドームでの開幕カード(3月26日から横浜戦)を経て、甲子園の開幕ゲームは4月6日からの巨人3連戦。重量打線相手に絶好の腕試しとなる。

 [2010年1月9日11時16分

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