西武のドラフト1位左腕・菊池雄星投手(18=花巻東)が26日、新人合同自主トレで初めて捕手を座らせた。疲労を考慮して2、3割程度の力だったが、テンポよく25球を投げ込み、理想として高校野球のように1時間半の試合を挙げた。試行錯誤していたフォームを、好調だった昨年春の一連の動作がスムーズなものに戻し、球界全体で取り組む試合時間短縮にも意欲を見せた。

 捕手を座らせての投球は昨年11月以来で、久々の感覚だった。3日連続でブルペン入りした雄星は、まず立ち投げで28球。試運転を終えると、田原ブルペン捕手を「お願いします」と言って座らせた。軽快なフォームで、ミットをめがけて投げ込む。「2、3割の力でした。肩ひじや首にも張りがあったんですが、明日(27日)で自主トレが最後だし、疲れた中でどれだけ投げられるか、あえて投げました」と振り返った。

 疲労がピークで力感はなく、球速は100キロ程度。ただ25球のうち、18球がストライクゾーン付近に集まった。視察した小野2軍投手コーチは「ストライクをとるのに困るタイプではない」と、制球の安定感に目を細めた。まだ本格投球といえる段階ではないが、フォームには迷いが消えていた。合同自主トレの序盤から、振り上げた右足を止める新フォームに取り組んできたが、一連の動作が流れるようなフォームに様変わりしていた。

 「自分が気持ち良く、何も考えずスイスイ投げられるフォームが一番。足を止めると雑念も考えちゃうので、一番調子が良かった時のフォームに戻しました」と昨年春のセンバツで、9回1死まで無安打の快投を演じた1回戦鵡川(北海道)戦のビデオを参考にした。試行錯誤してきたフォームの方向性が固まり、投球テンポも自然と早まった。返球を受けると、すぐ次の投球動作に入った。そこにも狙いがあった。

 「テンポを早めるのは自分自身のためであり、野手も守りやすいし、打線にもリズムが出る。試合時間が長いとお客さんも飽きてしまうので、高校野球のように1時間半、2時間の試合が理想ですね」と涼しい顔で言った。投球のスピードアップは、打者に考えさせる時間を与えず、試合に緊迫感を与え、試合途中で帰るファンも減少するなどのメリットがある。好調だった鵡川戦は、わずか1時間38分で投げ切っている。

 試合時間の短縮は球界全体で取り組むテーマ。昨季のパ・リーグ平均試合時間は3時間15分だった。だが、雄星は不可能と思っていないようだ。「プロではかっこ悪いかもしれないけど、全力疾走を大事にしたい」とイニング間にも、高校野球の精神で挑む心構えでいる。限りなく難しい1時間半ゲームも、球界の常識にとらわれない大物ルーキーなら実現させてしまうかもしれない。【柴田猛夫】

 [2010年1月27日9時6分

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