<横浜2-12巨人>◇1日◇横浜スタジアム

 前日サヨナラ負けした原巨人が、尾花横浜に強烈なしっぺ返しだ。横浜での3連戦第3ラウンド。坂本勇人内野手(21)が本塁打が出ればサイクル安打という5打数5安打の乱れ打ち。前日から7打数連続安打と、リードオフマンの役割をきっちり果たした。触発された打線は、アレックス・ラミレス外野手(35)の1号グランドスラムなど13安打12得点で圧倒。内海哲也投手(27)も8回2失点で2連勝で、今カード勝ち越した。

 すでに勝敗は決していた。それでも打席に向かう巨人坂本に、誰もがワクワクした視線を向けた。大量10点リードで迎えた9回2死走者無しの第6打席。中堅後方のスクリーンには、この日の打撃成績が映し出された。1回の中前打から始まり、安打を示す緑色の文字が並んだ。「サイクル?

 知ってましたよ。ベンチで、みんなに言われてたんで。点差もあったんで、若干は意識しましたけどね」と試合後に告白した。本塁打が出れば、自身初のサイクル安打がかかっていた。

 結果は、横浜高宮から右前打。打球が内野の頭を越えると、安打なのに球場には「あ~」とため息さえ漏れた。惜しくも偉業は逃したが、5打数5安打。1試合5安打はプロ初で、前日31日から7打数連続安打の離れ業だ。「(内野安打など)ラッキーなヒットが2本ぐらいあったんで。まあ、ラッキーでした」と謙遜(けんそん)したが、内容が抜群だ。1回、ランドルフの4球目を中前打し、続く松本の初球に二盗。その松本がセーフティーバントを決め、2人あわせわずか6球で無死一、三塁を演出した。3番小笠原の先制打を呼び、今季初の2ケタ得点の大勝につなげた。

 レギュラー3年目。自らも重視するシーズンは、心身の成長を伴い迎えた。開幕から9打席連続無安打。10打席目で、ようやく初安打の3ランが出た。だが、周囲の心配をよそに振り返る。「正直、焦りはなかったです。良い意味で開き直れるようになったんです」。オープン戦も一時は打率1割台と低迷したが、終盤に復調。ラスト4試合で3本塁打を放ち、チームトップの5本塁打で終えた。「その日の打席に集中しようと思いました」と心の成長があった。

 体の成長は努力のたまものだ。キャンプの激しい練習で、体重は75キロまで落ちた。元に戻すべく、オープン戦の遠征中は意欲的に肉食。さらに宿舎や早出のトレーニングで、ひたすら腕立て伏せ。78キロに戻し、開幕を迎えた。

 松本との1、2番コンビが機能し、カードを勝ち越し。勝率を再び5割に戻した。坂本の大暴れに、原監督は「5打数5安打でしょう。ねえ!」と、大きく目を見開き喜んだ。ただ、本人は冷静だ。「僕が出塁すれば得点が増えると思う。今日だけじゃなく、1日でも多く出塁という形にすればいい」と気持ちを引き締めた。勝利のためだけに、今季も1番打者の仕事を果たす。【古川真弥】

 [2010年4月2日9時5分

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