<ソフトバンク5-4西武>◇20日◇福岡ヤフードーム
“史上最強投手陣”の守護神は、やっぱりこの男だ。ソフトバンク馬原孝浩投手(28)が「魂の12球」で1点のリードを死守した。9回2死一、三塁で、12球目まで粘られた西武中島をフォークで空振り三振に仕留めて試合終了。3失点で救援に失敗した18日の借りを返した。12三振を上積みしたチームは今季の奪三振数を1220個として、日本記録(1208個=05年阪神)を更新した。
右腕を突き出し、大きく口を開いて馬原がほえた。極限の緊迫感から解き放たれ、クールな守護神が感情を全身で表現した。「自然と出ました。1点差で、絶対に落とせない試合だったので」。9回2死一、三塁。粘る中島へフルカウントからの12球目。歯を食いしばって投じたフォークが、バットの数センチ下をくぐり抜けた。ドームが割れそうな歓声とともに、奇跡の逆転Vへの扉が大きく開いた。
百戦錬磨の男でもほとんど味わったことのない、異様なムードだった。第1打席で2ランを放っている中島との死闘。追い込んでからのフォークを6度もファウルされた。背番号14が投球動作に入るたびに、3万5000人超の大観衆から声にならないどよめきが起こる。西武ファンが涙を流し、ソフトバンクファンは手を合わせ祈った。この1球が、優勝の行方を決める-。真っ赤に染まった福岡ヤフードームはそんな思いに包まれた。
「あんな雰囲気は、05年のプレーオフ以来ですね」。脳裏によぎったのは5年前。リーグ優勝をかけ、ロッテと最終5戦目まで互いの意地をぶつけ合った。馬原は2戦目から4試合連続で登板して、最終戦の8回に決勝の逆転打を喫していた。
失敗を糧にできるからこそ、絶対的クローザーでいられる。18日には同じ中島に適時打を許すなど9回に3点を失い同点とされた。「カットボールを投げて打たれた」。この日はマウンドへ上がる直前、捕手の山崎に「全力でいくから、強気でリードしてほしい」と伝えたという。投じたのは最速154キロの直球と宝刀フォークだけ。打たれても、粘られても、自分の生命線とする2球種だけを信じ抜いた。
最後を締めた空振り三振で、今季のチーム奪三振数は1220個となって日本記録を更新した。「それだけ(三振を)取れているというのは、チームにとっていいこと」。球史に残る大記録は、攻める投手陣の象徴でもある。ホークスが誇る守護神は「(中島を)歩かせることは頭になかった」と言い切った。7年ぶりの頂点に立つ瞬間、マウンドにはきっと、馬原の姿があるはずだ。【太田尚樹】
[2010年9月21日11時22分
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