<パCSファイナルステージ:ソフトバンク0-7ロッテ>◇第6戦◇19日◇福岡ヤフードーム

 ロッテ成瀬善久投手(25)がソフトバンク杉内とのエース対決をまたも制し、クライマックスシリーズ(CS)最優秀選手に輝いた。CSファイナルステージ第1戦では、初の中4日の先発で杉内と投げ合い、4安打1失点の完投勝利を飾った。再び中4日の第6戦では4安打完封で、チームの5年ぶりの日本シリーズ進出を決める立役者になった。

 ロッテ成瀬は感涙してうずくまる西岡剛内野手(26)を見ながら戸惑っていた。「勝利の瞬間っていうのは真ん中で集まってワイワイやるイメージだったので…。リアクションとりにくかったですね」。想像していた幕切れとは違ったが、喜びはジワジワとやってきた。

 MVPにふさわしい圧巻の完封勝利だ。最優秀選手に名前が呼ばれると、チームメートの誰からも拍手を送られた。大一番で抜群の集中力を発揮。代名詞の右打者外角へのスライダーが面白いように決まった。「1戦目のデータを考えずに、原点に戻ろうと里崎さんと話したんです」。散発4安打。まったく危なげなかった。

 誕生日翌日の登板だった第1戦で、完投勝利を飾った。自分でも今までで一番と振り返るほど内容の濃い投球だった。自宅に記念球を並べている成瀬にとって、大事な1球になるはずだったウイニングボールだが、今江の息子、陸斗くんに譲った。「僕も誕生日翌日だったんで、欲しかったんですけど、今江さんの息子さんが誕生日だったのを覚えていたんです。僕はまた勝てばいいと思って、あげちゃいました」。

 5回、ウイニングボールのお礼は今江から2点適時打という形で返って来た。成瀬からもらったウイニングボールを手に、第1戦の後、今江は子供の誕生日会を家族で開いた。トイザらスで買ったゴセイジャーのおもちゃとともに、勝利の証しを渡した。このCS中、失策もあり、らしくないプレーが目立った今江だったが、成瀬の気遣いにこたえたい気持ちが、大一番での適時打になった。

 この日のウイニングボールもキャプテンとして1年間引っ張って来た西岡にあげた。自分の分は日本シリーズでいい。「ほしいと言ってたんでね」。感極まっている主将に、惜しげもなく譲った。

 西村監督から、連続中4日での先発を告げられ、チームのすべてを託されたことを意気に感じていた。「託してくれたことで意識が高まった。成長させてくれたと思う。開き直って、自分の投球をした。100点以上」。この日もプレッシャーをまったく感じなかったという。エースの風格か。ロッテには成瀬がいることをあらためて知らしめた。【竹内智信】

 [2010年10月20日9時23分

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