<コナミ日本シリーズ2012:日本ハム2-10巨人>◇第5戦◇1日◇札幌ドーム

 日本ハム吉川光夫投手(24)は第1戦のリベンジならず、チームも大敗して後がなくなった。中4日で本拠地・札幌ドームでの先発マウンドを託されたが、6安打5失点で3回持たずにノックアウト。2回には初戦でも本塁打を許した巨人ボウカーに先制2ランを浴びるなど、制球力に苦しんだ。今季リーグトップの防御率を誇った左腕にとっては、ほろ苦いままの日本シリーズとなった。

 晴れ舞台の中心で、輝くことは出来なかった。中4日でマウンドに立った吉川に、パ・リーグの強打線をねじ伏せてきた面影はなかった。巨人打線に見透かされたようにとらえられ、心を静める余裕もない。流れ落ちる大量の汗を、ユニホームの袖で何度も拭った。

 いきなり、7球連続でストライクが入らない不安定な立ち上がり。2回、先頭の矢野に内野安打を許すと、1死後、ボウカーに真ん中に入った145キロ速球を右翼席へ運ばれた。味方が1点を返した直後の3回には、4長短打で3点を失ってKO。リーグトップの防御率1・71を誇った左腕が、日本シリーズで先発した2試合では計9失点、通算防御率12・15と精彩を欠いた。「しっかり抑えることが出来ず悔しい」。厳しい現実に、ぎゅっと口元を結び、マウンドを降りた。

 これで日本シリーズは、07年から3連敗。4回4失点だった第1戦の試合後、これまで完封した時でさえ褒めることのなかった栗山監督が「お前のおかげで、ここまで来たんだから。いいんだ」と、今年初めて優しい言葉をかけてくれた。失意に沈んでいたところを、救ってくれた指揮官の言葉。だが、勝利で報いたいという強い思いは、強力打線に打ち砕かれた。

 周囲から、精神的な脆さが最大の弱点と言われ続けて6年。今季、ようやく才能が花開いた。負けなしだった札幌ドームでのナイターゲーム。日本一へ王手をかけるため、今年初めて中4日で第5戦を託されたが、実力通りの投球は出来なかった。シリーズ開幕前「僕はいつも、悪い意味で周囲の期待を裏切ってしまうから」と、こぼしていたパ・リーグ最強左腕。納得の投球ができなかったリーグ制覇の主役は「すいません。チームに申し訳ないです。それだけです」と言葉少なに球場を後にした。【中島宙恵】