<西武4-2日本ハム>◇30日◇西武ドーム

 余計な感情は捨て、勝負に徹した。西武菊池雄星投手(21)が、後輩の大谷翔平投手(18)を2打席連続三振に抑えた。2打席ともに勝負球は外角低めに沈むスライダー。かつて、高校球界を騒がせた伝家の宝刀を、ストライクからボールへと絶妙に配した。「個人的な勝負はもっと力で抑えられるピッチャーになってから。今はミット目がけて投げるだけ」。力勝負できなかった今を冷静に振り返る姿に、プロで積み重ねてきた年月を示した。

 大谷の存在を知ったのは、彼が小学6年生の時だった。「小6でホームランを120本打って、(少年野球の)記録を作ったすごいやつがいるって聞いて。小学生の時からすごく有名だった」と回想。交わることがなかった2人の怪物を引き寄せたのは、甲子園だった。菊池が高校3年生の時、偶然にも全国大会に出場中だった中学3年の大谷が、花巻東の甲子園練習を見学。怪物の人生が交差した瞬間だった。

 菊池

 最近の甲子園では“怪物”って呼ばれる人がたくさん出てきますけど、彼は本当の怪物です。

 大谷が甲子園初出場を決めた日、うれしそうに怪物を紹介した。甲子園が結び付けた縁。後輩のプロ入り後、その糸は、日本で最も注目される対決に変わった。「(注目されるのは)僕じゃなく、大谷君の方でしょ。意識しすぎると疲れちゃうじゃないですか。僕、あまり疲れたくないので」。自虐的に振り返りながら、ニヤリと笑った。

 怪物対決の第1章は、先輩に軍配が上がった。余韻に浸ることなく、菊池は今後も繰り返される怪物対決に視線を向けた。「今日は対戦が初めてだったので、たまたま三振に抑えられた。テレビでも見てましたけど、真っすぐに強いし、次は対応してくると思う」。怪物対決が野球界をにぎわせる。【久保賢吾】