<中日1-4阪神>◇24日◇ナゴヤドーム

 勝利を呼ぶ男ボイヤーだ。1点を追う7回から2イニングを無失点。反撃のリズムを生み、逆転勝ちにつなげた。2軍落ちしてフォームを修正。力強い直球を武器に進化した助っ人は2日連続の白星をゲットした。初勝利から2日連続勝利は、郭李以来20年ぶり!

 バースも背負った背番号44が神々しく見えてきた。

 真夏の優勝争いに強力な助っ人が仁王立ちだ。またも5月加入の阪神新外国人ブレイン・ボイヤー投手(32)が勝利を呼んだ。1点を追う7回から2番手で登板。先頭の代打中田亮を三ゴロに詰まらせると、剛速球はうなりを上げる。続く1番藤井には初球カーブでストライク、2球目は150キロでファウル…。3球目は外角に152キロをズドン!

 2戦連続の対戦だが、手も出させず見逃し三振に仕留めた。

 ボイヤー

 本当に、こうやって試合に使ってもらって勝ちに貢献できてうれしいよ。本来のフォームが戻ってきた。ミスタークボ(投手コーチ)が鳴尾浜で、変な癖がついていたのに気づいて修正してくれた。感謝しているよ。

 前日23日の中日戦もビハインドの展開で登板し、降板直後に打線が猛攻。来日初勝利を挙げていた。同じような展開でこの日も2イニングを無失点に抑え、9回に打線が逆転。2日で2勝をマークした。

 2軍での奮闘が実りつつある。この日投じたトレードマークの剛速球は上ずることなく、指先にかかり、球威たっぷりだった。6月下旬に1軍初昇格後は8試合で防御率4・35と結果を残せず。直球は150キロ台を計測しても、簡単にはじき飛ばされた。7月終わりに2軍降格。メジャー通算233試合に登板したプライドを捨て、久保2軍チーフ投手コーチに頭を下げた。「オレにも教えてくれないか…」。同僚のスタンリッジが10年に11勝、メッセンジャーが11年に12勝。日本での飛躍を陰で支えたのが当時1軍コーチのミスタークボだった。

 大きな修正点は1つだ。ボイヤーはマウンドの傾斜に沿って体ごと沈んでしまうため球が上ずっていた。久保コーチは言う。「傾斜と相反する力を生かして投げないといけない」。始動直後、推進力のベクトルは斜め上へ。そこから投げ下ろすことで球威が増し、制球は安定するようになった。2軍戦で先発を重ねたのも先発挑戦ではなく、球数を多く投げて投球動作を浸透させる意図があった。

 フル回転の救援陣にとっても朗報だろう。中西投手コーチは「何か持っているんじゃないか、いまは。(起用法は)バランスを考えてになる」と説明。ベテラン久保、勢いの松田、左腕加藤、そしてボイヤーも安藤&福原につなぐセットアッパー軍団に仲間入り。剛腕は呪文のように言う。「右足にためた力をいかに左足に持っていけるかなんだよ」。鳴尾浜でよみがえった助っ人もV戦線に名を連ねる。

 ◆ブレイン・ボイヤー

 1981年7月11日、米ジョージア州アトランタ生まれ。00年ドラフト3巡目でブレーブス入団。09年からカージナルス、ダイヤモンドバックス、メッツなど。今季はロイヤルズ3Aから5月末に阪神入り。アマ時代は主に野手。高校最後の試合で初めてマウンドに上がり、ブレーブスのスカウトの目に留まった。最速158キロ。趣味は狩り。191センチ、102キロ。右投げ右打ち。

 ▼ボイヤーが2日連続の白星。阪神外国人ではバルデスの02年7月24、25日巨人戦(甲子園)以来だが、来日初勝利から2日連続となると郭李の93年7月9、10日巨人戦(甲子園)以来、20年ぶり2人目。