中日は9日、来季から落合博満氏(59=日刊スポーツ評論家)が球団初のゼネラルマネジャー(GM)に就き、谷繁元信捕手(42)が選手兼任監督に就任することを発表した。両氏は要請を受諾し、この日名古屋市内で行われた臨時株主総会と役員会で承認された。球団社長の交代も含め、球団史上最大規模の大改革を断行した白井文吾オーナー(85=中日新聞社会長)がその舞台裏を明かし、落合氏がGMとしての支援を申し出たことを明かした。谷繁新監督は今日10日、名古屋市内で就任会見を行う。

 大改革は、落合氏のアドバイスに基づいたものだった。世間だけでなく、中日新聞本社内をも驚かせた人事を断行した白井オーナーが、得意顔で舞台裏を明かした。

 「つい最近だよ」。オーナー自身が9月、監督候補にリストアップしていた落合氏と極秘会談。腹案の谷繁新監督を相談したことがすべての始まりだったという。落合氏は「素晴らしい。私も推薦します」と即答。落合氏も以前から谷繁を監督候補と認めており、考えが合致した。さらに落合氏から「私が支援します」と申し出があり、谷繁監督誕生への腹を固めたという。

 その際、同オーナーは「私の顧問、アドバイザーになってほしいと言ったんだ」と、オファーしたことを明かした。この要請に「GMって手がありますよ」と、想定外の提案返しだった。「GMを頼んだわけではない。向こうから出してきた。そりゃいいなとなって、GMに落ち着いたんだ」。

 そこからメジャーのGM制度を研究。映画「マネー・ボール」のモデルにもなったアスレチックスのビリー・ビーンGMの手腕に感銘した。「経費を少なく、おやっと思う選手を取って生かして優勝させとる。理想ですよ。電話で聞いたら落合さんも知ってたね」。出した指令が「私が口を出すのはお金だけ。枠を守れ、それだけだ」というビーン流だった。チーム編成はもちろん、資金運営も含めた全権GMを約束。ただし結果が出なければ、米大リーグのGMは解任される。「気に食わなけりゃ代えるよ。あんまり長くやらすつもりはない。オレの年齢(85歳)を考えたら時間がない(笑い)。すぐにでも、来年でも優勝してほしいということ」とのドッキリ発言も飛び出した。それでも「兼任監督の成功例は少ない。でも谷繁が試合に出続けたい願いをかなえるには兼任しかない。それをバックアップしてほしいんだ。選手もGMと監督は優勝請負人だということ。落合さんも『分かりました』と言うとったわ」と、手腕に期待を寄せた。

 同オーナー自ら谷繁に監督要請。「GMを任命する前に谷繁に決めちゃったんだから」と、落合氏の最初の仕事を奪ってしまったと苦笑した。「落合さんは経験豊富。戦術面で第一に力を発揮してくれるんじゃないか。チームの編成もね。谷繁は捕手として要になってきた人。考える力を持っている。非常に前向きな男だ。その2人が協力し合えばいいゲーム展開ができる」。ここに入閣予定の森繁和ヘッドコーチを交え、トロイカ体制で常勝復活の期待を目指す。【松井清員】

 ◆GM(ゼネラルマネジャー)

 監督、コーチ、選手の人事権を持ち、選手獲得やトレードなどチームづくりの最高責任者。米大リーグでは一般的で、アスレチックスのビリー・ビーンGMの書籍「マネー・ボール」は映画化された。日本では球団代表などが同様の職責だったが、95年にロッテが広岡達朗氏を初起用。その後、オリックスが中村勝広氏、楽天がキーナート氏と三村敏之氏、ソフトバンクが王貞治監督を兼任で起用。日本ハムは高田繁氏(現在DeNAでGM)と山田正雄氏、巨人も清武英利氏、原沢敦氏を起用。現在GMがいるのは日本ハム、巨人、DeNA、阪神。