【台中(台湾)14日=古川真弥】国際舞台で、もまれて大きくなれ。楽天は今日15日、アジアシリーズ第1戦となる義大(台湾)戦を迎える。ジョーンズ、マギー、松井ら外国人とベテランの主力はおらず、若手中心で臨む。台中で全体練習を指揮した星野仙一監督(66)は、5年目の大砲候補である中川大志内野手(23)の4番抜てきを決めた。

 予想オーダーを目にしていた星野監督が、不意に「中川は一塁を守れるな」と口にした。そのままベンチを離れ、グラウンドの仁村チーフコーチへ歩み寄った。当初はDH起用の予定だったが、一塁だった小斉と入れ替えた。それだけ、期待を込めたオーダーだ。

 中川大志、23歳。5年目の今季は8月後半に1軍に昇格したが、1試合2打席に立っただけで無安打に終わった。通算でも、11試合で3安打、0本塁打。11年秋に右膝を故障し、一時は育成選手となった苦労人だ。だが、2軍のイースタンリーグでは今季、本塁打王(15本)と打点王(71打点)の2冠に輝いている。実は、長打力はチーム屈指の和製大砲候補だ。

 抜てきの理由を、星野監督は「せっかくの国際大会なんだから。少しでも可能性のあるヤツは使う。何事も経験させないと。きっかけをつかませるのが、俺らの仕事だから」と言った。シーズンでは、同じ右打ちのジョーンズという、高い“壁”がいる。若手主体の今シリーズだからできる起用だった。

 国際試合というのもポイントとなる。自身も08年北京五輪で代表の指揮を執った。試合開始2時間前に提出されていた相手のオーダーが、開始時に全く違っていたり、判定がばらばらな審判団に苦労したり、日本とは勝手が違った。ただ、選手にとって、その経験が糧になると強調した。「キャッチャーが球を捕って、いかに早くストライクゾーンが違うか分かるのも大事。外が甘いとか、それを他の打者に伝えればいい」とチーム一丸で戦わせる。

 中川は「打撃でアピールできたら。絶好のチャンスです」と、気合十分だ。ストライクゾーンの違いにも「打てると思った球は全部、打ちにいきます」と臆さなかった。自慢のバットで、新たな星野チルドレンに名乗りを上げたい。【古川真弥】<楽天のアジアシリーズ参加選手>【投手】則本、田中、長谷部、戸村、金刃、片山、永井、小山伸、辛島、菊池、福山、宮川【捕手】岡島、小関、嶋、伊志嶺【内野手】藤田、阿部、枡田、銀次、小斉、西田、中川、岩崎【外野手】森山、中島、聖沢、榎本