阪神の新外国人マウロ・ゴメス内野手(29=ナショナルズ3A)の来日が延期となった。4日、球団が発表した。母国のドミニカ共和国で1月27日(現地時間)に生まれたばかりの第1子(長女)が体調不良のため入院。当初は明日6日に来日してキャンプ地の沖縄入りする予定だった。合流時期は未定。期待の大砲も、調整遅れは必至となった。

 曇天の沖縄に届いたのは、良くない知らせだった。「もう少し、奥さんについてやりたい」。連絡の主はゴメスだった。1週間ほど前にパパになったばかり。かわいい愛娘の体調が芳しくなく、入院した。一家の主としてわが子、そして心労の重なる夫人を置いていくわけにはいかない。断腸の思いで来日延期を伝えてきた意思を、球団は当然のように了承した。

 和田監督も複雑な表情を浮かべた。「事情が事情だけに、なるべく落ち着いた気持ちで来てくれたほうがね。ずっと我慢かな。ピンポイントでいつとは言えない。事情が事情なんで何とも言えないね」。指揮官は一昨年のオフ、ドミニカ共和国のウインターリーグでチェックしているが、多くの首脳陣は映像でしか見たことがない。未知の部分も多いだけに不安は募る。

 チームの命運を握る4番候補だ。昨季阪神は12球団ワーストの82本塁打。広くて浜風が吹く甲子園の特性もあるが得点力不足、特に長打力不足に泣かされた。9年ぶりのリーグ優勝へ、右の大砲への期待は大きい。本人にとっても、本来ならば1日でも早く日本の野球に慣れて、万全の態勢で開幕に臨みたいところ。第1子の誕生前から、チーム関係者には「早く日本へ行きたい」と連絡していたほど。だが、愛する家族の健康問題だけに、遠い日本で不安を抱えながらプレーしても得策ではないだろう。

 チームにとっては描いていたプランは白紙になった。長打力が魅力なゴメスは、一方で三振の多さへ不安の声もある。変化球への対応を含め、日本の配球を把握するため、2月中旬にも実戦デビューして少しでも多くの打席に立つ予定だった。「しょうがない」と思いやる黒田ヘッドコーチも「時間はかかるやろ。ポンとやってケガしてもダメだし」と大幅な調整遅れを覚悟していた。

 和田監督は「こっちに来て、1日目の動きを見てメニューを決める。どれぐらい延びるかだよね」。来日時期は未定で、実戦調整に支障がでるケースもある。一塁には新井もいるが、14年虎打線の中核を期待されるだけに、調整具合は気になるところ。今は愛娘の回復を祈るばかりだ。

 ▼阪神新外国人選手の来日が2月になったのは、94年同8日に来日したディアー以来。87年にキーオがビザ取得の遅れで2月9日来日。91年にはオマリー、ウイン両選手が同年1月17日に始まった湾岸戦争の影響で2月7日に来日している。新外国人選手をのぞけば、近年では12年に3年目のマートンが第3子出産立ち会いのために2月7日に到着した。