<広島1-3中日>◇29日◇マツダスタジアム

 竜の代役男がコイ神話を打ち崩した。体調不良の和田に代わって、左翼で出場した中日松井佑介外野手(27)が決勝2ランだ。1-1の延長10回に左翼スタンドに2号2ランをぶっ放した。今季延長戦9戦負けなしの広島を寄り切り。真夏の6連戦初戦を制し、3位広島に1・5ゲーム差。首位巨人も4・5ゲーム差と射程圏内だ。

 粘り強いカープに競り勝った。試合を決めたのは松井佑のバットだった。1-1の同点で迎えた延長10回。1死二塁から広島中田のフォークをつかまえた。舞い上がった白球はマツダスタジアムのカープファンの悲鳴に包まれ、左翼スタンドにある看板にズドン。今季延長戦9戦負けなしの広島に土をつけたのは、伏兵の2号2ランだ。

 「次につなげようとか、自分で決めようとかいろいろ考えてました。ホームランはたまたま。少しこすったけど、何とかスタンドに入ってくれ~と思って走りました」

 試合前の球場に背番号5の姿はなかった。右肘痛のルナが離脱後、4番を張ってきた42歳が体調不良のため欠場。主砲抜きの戦いを余儀なくされた。それでも松井佑は「球場に来てから知った。スタートからあるのかなと思っていた。ただ、スタメンの準備はいつもしているので」と冷静だった。今季10度目の先発出場に燃えた。

 チームの全3得点をたたき出した。2回には無死一、三塁から「思い切っていけた」と先制の中前打を放った。前日28日には休日を返上。ナゴヤ球場の室内練習場で黙々とバットを振り、牙を研いだ。「準備はいつもしている」の言葉にうそはない。3回から7イニング連続で無安打と竜の打線は沈黙。重いムードを一瞬で変えた。

 谷繁兼任監督もタオルを首に巻き、充実の表情を浮かべた。真夏の6連戦初戦を熱いゲームで粘り勝ち。これで3位広島に1・5ゲーム差になった。代役が活躍したと問われ、首を振った。「前から言ってるように、代わりじゃないって!」。グラウンドに立つ選手が、全力を尽くす-。これが谷繁野球だ。

 離脱中のルナ、平田も勝負どころに向けて準備を整える。この夜は上位3チームがそろって敗れ、首位巨人とは4・5ゲーム差になった。ぼんやりとではあるが、セ界の頂が見えてきた。【桝井聡】