<阪神3-4中日>◇21日◇甲子園

 中日がドラ1コンビの奮闘で終戦を阻止した。負けか引き分けでCS進出が断たれた阪神戦で、12年ドラフト1位の守護神福谷浩司投手(23)が9回からの2イニングを無失点。両リーグ最多68試合登板の力投に応え、11回に11年ドラフト1位の高橋周が決勝犠飛だ。福谷はプロ2年目の初勝利。22歳三ツ俣のプロ初弾など若い力で粘り勝って4位浮上した竜は、明日23日から本拠名古屋で巨人胴上げ阻止に臨む。

 魂の1球がチームを終戦にさせなかった。9回2死から内野安打と自身の一塁悪送球で招いた二、三塁の大ピンチ。だがここで関本に投じた真っすぐは、自己最速の157キロを計測した。甲子園の虎党のため息を誘う力ない二ゴロが転がり、サヨナラ負けをしのいだ。続く10回も0封すると、11回に高橋周が勝ち越し犠飛。竜の今季を終わらせなかった2年目守護神にプロ初勝利が待っていた。

 福谷

 もともと下手くそだし(悪送球後も)怖いぐらい冷静でした。でもあの1球はすごい力が入った。3連敗するかの戦いだったので勝てて本当によかった。初勝利は実感がないです。

 11回を締めた岡田からウイニングボールを受け取ると、ようやく鉄仮面が表情を崩した。チームは負けか引き分けでCS進出の道が断たれた。2年連続Bクラスは28年ぶりの屈辱になる。がけっぷちに変わりはないが、その瞬間は1日でも遅い方がいい。福谷は両リーグ最多を更新する68試合目登板も、疲れを上回ったのは「負けたくない」との思い。魂の39球だった。

 愛知出身の慶応ボーイで78年の中日球団史上、一番の秀才といわれる。しかも特に頭がいいとされる理工学部で履修科目はオール優。ロッテ成瀬の投球動作を解析した卒業論文は学会発表し、学部優秀者に贈られる「藤原賞」も受賞した。

 江藤省三前監督(72)は「学者が野球をしている感じ。多くの教授に何で将来不安定なプロに行くんだと反対された」と明かす。だが3年時に選ばれた学生日本代表でハイレベルの米国野球に接し、「今しか挑戦できないプロでやる」と決意した。1年目は内転筋の故障もあって9試合に終わったが、オフの体力強化で今季は150キロ台を連発。岩瀬離脱後の8月からは守護神を務め、今や資格を持つ新人王候補にも上がる。

 福谷

 次も優勝のかかった巨人ですからね。残り試合は1つも負けたくない。

 明日23日からはマジック5でやってくる巨人3連戦。1つでも負ければ即終戦だが、97年の開場以来、敵の胴上げがないナゴヤドーム神話も守りたい。クレバーで熱い守護神が最後のトリデになる。【松井清員】