ポスティングシステムを利用しての米大リーグ移籍を視野に、オリックスから国内フリーエージェント(FA)宣言していた金子千尋投手(31)が24日、今オフのメジャー挑戦を断念したことを明らかにした。既に球団には伝えている。今後はオリックス残留か、国内他球団への移籍か二者択一に絞られた。沢村賞右腕をめぐる争奪戦の激化は必至で、金子の選択が注目される。

 これまで日米双方に移籍の可能性を残してきた金子が、今オフのメジャー移籍を断念した。京セラドーム大阪でのファン感謝イベントに参加後に「今年オフのポスティングはしない方向で考えています」と明言した。これにより、今後の選択肢はオリックス残留か、国内他球団への移籍に絞られた。

 関係者によると、金子は21日の球団との交渉後に、今オフのポスティングを要望しない考えを伝えたという。ただ将来的には「この先どういう風になるか分からないし、今年以上にメジャーに挑戦したい気持ちが出てくるかもしれない」と、来年以降の米球界挑戦には含みを持たせた。

 球団とは既に残留交渉を重ねてきた。条件も提示されており、3年最大15億円から、21日の交渉で上積みされた可能性がある。金子には育ててもらった感謝の気持ちがあり、この日も「オリックスじゃなかったら、今の自分があるかどうか分からない」と愛着を口にした。

 球団は1年契約で残留した上で来オフのポスティング容認を選択肢に入れている可能性がある。その場合、金子は球団への愛情を示すことができ、球団はポスティングでメジャー球団から最大2000万ドル(約23億円)の譲渡金も期待できる。ある球団幹部は「あらためて提示した条件面に納得したのだろう」と推察する。

 一方で、国内他球団による争奪戦も必至だ。ソフトバンク、中日、DeNAに加え、阪神も参戦表明。金子は今後について「次(のFA権取得)は4年後。どうなるか分からない。今しかできないし、聞けないこともある」と話し、国内他球団との交渉に臨む姿勢を示した。他球団からのオファーについては「あるんじゃないですか。僕のところにはまだ来てないですけど」と話し、代理人を通じて既に届いている可能性をほのめかした。「本当にすべてのことを、いろんな方向から考えたい」と代理人を通じて交渉していく構えだ。

 ◆海外FAには

 FA宣言した選手は1シーズン出場選手登録145日を満たし、これが4シーズンに達した時に海外FA資格を取得。現在31歳の金子は国内FAを宣言したため、海外FA権取得は早くても2018年、満35歳を迎えるシーズンになる。<金子FA問題経過>

 ◆メジャー願望

 シーズン終了後にワールドシリーズ第3戦を観戦し「あこがれの場所でやってみたい気持ちは持っています」。帰国後にポスティングシステムの利用を視野に入れていると公言。

 ◆FA宣言

 申請期限の最終日、11月11日に国内FA権の行使を表明。「すべての可能性を考えたい」。ソフトバンク、中日が獲得に名乗り。

 ◆日米野球

 同14日の第2戦に先発。メジャー関係者が見守る中、5回3安打3失点。「投げている時も、今もそうだが、考える余裕がなかった」と語った。

 ◆容認せず

 オリックス瀬戸山本部長は同20日、ポスティング制度について現時点で「認めない」。

 ◆残留交渉

 同21日、オリックスが金子の代理人と4時間交渉。条件を見直した可能性もある。