阪神から海外フリーエージェント(FA)宣言していた鳥谷敬内野手(33)が残留の意思を固めたことが8日、分かった。長年の夢であったメジャー挑戦を視野に入れていたが、粘り強く慰留を続けた虎の誠意に応える形となった。この日の夜遅くに阪神サイドに連絡を入れたもようだ。阪神は5年程度の大型契約を提示しているとみられ、「生涯虎」の決意のもと、ミスタータイガースへの道を歩むことになる。

 鳥谷が決断した。早大時代からの夢であるメジャー挑戦か、残留か。約2カ月間悩み抜いた末、縦じまで自身初の日本一を目指す決意を固めた。この日の夜遅く、阪神サイドに残留の意思を伝えたとみられる。

 昨年日本シリーズ終戦を迎えた10月30日、2年間保有していた海外FA権の行使を決断したことが判明。当初はメジャー挑戦に大きく気持ちが傾いていた。11月上旬には渡米し、敏腕スコット・ボラス氏を代理人に選定。海を渡る準備を着々と進めていた。

 メジャー側はブルージェイズやナショナルズ、メッツ、パドレスなど複数球団が獲得に興味を示していた。特にブルージェイズは昨季中から二塁レギュラー候補として鳥谷に注目。同球団関係者は11月中旬の時点で、「鳥谷は守備に定評がある。スカウト陣の間で評価が高い。二塁ならレギュラーに定着するのではないか」と明かしていた。

 実際、メジャー関係者の話を総合すれば、水面下ではブルージェイズを始め、1年契約でのメジャー契約の話はあったもようだ。ただ、近年の日本人内野手を低評価する流れも影響し、レギュラーではなくユーティリティープレーヤーとして期待するチームが多かったとみられる。

 そんな中、阪神は粘り強く慰留を続けてきた。年内に返事をもらうという期限を延ばしてまで、残留を願った。阪神サイドの誠意が、鳥谷の心を徐々に残留へと傾けていったのだろう。

 昨季は日本一まであと1歩のところで敗れた。2年目の05年以来、リーグ制覇も達成できていない。現役最長で日本歴代3位の1466まで伸ばした連続試合出場にもこだわりがある。チーム30年ぶりの日本一という大目標を頭に思い描きながら家族にも相談した結果、最後はメジャーという夢を封印し、再び縦じまに袖を通そうと決めた。

 前日7日から沖縄県内でロッテ井口らとの合同自主トレをスタート。遠い南国から、全国の虎党に朗報を届けた。阪神は鳥谷流出に備えて大和、西岡、上本らの遊撃コンバートも視野に入れていたが、鳥谷残留というビッグニュースがすべての問題を解決した。

 球団は5年程度の大型契約を提示しているとみられ、生涯虎戦士となる流れだ。ミスタータイガースとして、全身全霊をかけてチームの先頭を走る。

 ◆FA鳥谷の経過

 昨年11月6日に代理人選定などのため極秘渡米。同13日に代理人がボラス氏に決まった。ナショナルズ、アスレチックスなども移籍先候補に挙げられたが、獲得を狙っていると報じられたのはメッツとブルージェイズ。メ軍は12月のウインターミーティングで、コリンズ監督が「日本の遊撃手はいい選手が多い」と補強リストに入っていることを明言。しかし今年1月6日、ニューヨーク・ポスト記者が「鳥谷の動向を追う計画はなくなった」と撤退を伝えた。ブルージェイズはアンソポロスGMが「チームにフィットする選手なのは確か」と代理人との接触を認めた。地元紙によれば、ブ軍は鳥谷を1年契約で獲得リストに残している模様。