巨人ドラフト3位の高木勇人投手(25=三菱重工名古屋)が「高木ボール」で猛アピールした。宮崎キャンプ第2クール最終日の9日、フリー打撃に初登板した。原監督が命名したカットボールとスライダーの中間の曲がり方をする独特の球を駆使し、松本哲と藤村に計42球で安打性は3本。直球で藤村のバットを2本折るなど、首脳陣の“黒豆王子”評が急上昇だ。

 この日一番の歓声だった。高木勇がフリー打撃で投じた、最後の2球。直球を投じ、連続して藤村のバットをへし折った。目を見張るようなスピードではない。それでもバットを真っ二つに粉砕し、スタンドをどよめかせた。高木勇は「たまたまだと思います」と謙遜しつつ「それだけ押し込んでいるのが確認できました」と納得の表情で振り返った。

 独特の曲がり方をする“魔球”が効いていた。横の変化球を、球速があまり落ちずに小さく変化する「カットボール」と申告している。だが、この日バッテリーを組んだ加藤は「カットボールというよりも、カットボールとスライダーの間ですね」と明かした。スライダーのように大きく曲がりすぎず、かといってカットボールほど小さくもない。独特の軌道を描く変化球を、原監督も「シーズンが終わるころには『高木ボール』と呼ばれるぐらいのボールになるだろう」と評した。

 「高木ボール」は緩急つけた2種類あり、さらにシュート、フォーク、カーブ、最速153キロ直球も適度に動く。藤村が「速いスライダー(高木ボール)とシュートが良かった。投げっぷりが良くて力強さを感じた」と言えば、松本哲も「カットというよりも、曲がりが大きくてスライダーみたいに感じた。シュートも良かった」とたたえた。

 黒豆が大好物なことから愛称は“黒豆王子”。キャンプ地にも黒豆を持参し、ぱくりと頬張るのが至福の瞬間だ。そんなかわいい一面も、マウンドでは一変する。プロ入り後初の打者への投球にも「緊張はしなかったです」。投球途中で靴ひもをゆっくり結び直すなど、落ち着きと度胸もある。「目標にされるような投手になりたい」。黒豆王子は、食卓に…ではなく、巨人投手陣に欠かせない存在を目指す。【浜本卓也】