<全日本大学選手権:日体大3-0吉備国際大>◇12日◇1回戦◇東京ドーム

 “ノムラの教え”を吸収した日体大(首都)平野智基捕手(4年=鳥栖)が、全3打点をたたき出し、吉備国際大(中国地区)を破った。今春から元楽天監督の野村克也氏(77)が客員教授に就任。2年ぶりの全国舞台で初戦突破を果たし、期待に応えた。

 “ノムラの教え”で日体大が全国大会で2年ぶりの勝利をつかんだ。立役者は主将で捕手の平野だ。「アウトローが原点なのでそこをうまく使えました。(先発の)作元の球も来ていたし、原点で攻めました」と3安打完封のリードに胸を張る。直球を主体に11奪三振。逆球になっても「打者に読まれない」と落ち着いてマスクをかぶり、毎回のように三振を奪った。

 完封勝利の要因に今年4月から同大の客員教授に就任した元楽天監督・野村氏の影響がある。直接指導を受けたわけではない。高校時代から同氏の著書「野村ノート」を熟読する大ファンなのだ。好きな捕手も元ヤクルトの古田敦也氏や楽天嶋という心酔っぷりだ。

 そんな憧れの人が今年から客員教授となり、3月26日には巨人2軍とのオープン戦に訪れた。しかしその評価は散々だった。「報道で野村さんが野球部のことを評価していないのを知りました。配球なんかも言っていたらしくて…。このままじゃいけないと思い勉強し直しました」と配球面を見直した。バイブルと呼べる「野村ノート」を読み返し、イニングごとに攻め方を変更。頭の中に何通りも配球を描き、引き出しを増やした。その結果、春のリーグ戦ではチーム防御率が1・5点台になった。

 研究の成果はリードだけでなくこの日の打撃にも表れた。1点リードの8回1死一、二塁。「スライダーに絞っていた」と配球を読みフルスイング。ぐんぐん伸びた打球は左翼線ギリギリに落ちる2点適時二塁打となった。初回にも先制の右犠飛を放つなど全3打点の大暴れだった。

 現在改定協議中のプロアマ規定で、野村氏の直接指導解禁は早くても今オフからとなる。それでも「早く実際にお会いしたいです」と弟子入りの意欲は満々。この日、同氏は観戦に訪れなかったが、“野村の教え”がチームを日本一に導くかもしれない。【島根純】

 ◆平野智基(ひらの・ともき)1992年(平4)1月10日生まれ。佐賀県出身。高校時代は鳥栖(佐賀)で3年の夏県大会ベスト16。日体大では今季から主将を務め、今季のリーグ打率3割5分3厘でMVPとベストナインを受賞。178センチ、83キロ。右投げ右打ち。