国内プロかメジャーかで進路が注目されていた160キロ右腕、花巻東(岩手)・大谷翔平投手(3年)のメジャー挑戦が決定的であることが18日、明らかになった。9月19日にプロ志望届を提出して以来、ドジャースなど大リーグの3球団との面談に臨んできた。一方で日本球団からもドラフト1位候補として高く評価されており、大谷は両親らと相談しながら検討を重ねてきた。周囲からは国内を推す声もあったが、高校入学時からの夢に対する思いが強かった。大谷を1位候補に挙げていた日本の各球団は、25日のドラフト会議に向けて対応を迫られそうだ。

 大谷は「夢」を選んだ。日本プロ球団からドラフト1位候補として高い評価を受ける一方、ドジャース、レンジャーズなど大リーグ球団からも誘いを受けていた。大谷は高校入学時からメジャー挑戦を夢に掲げていたが、周囲からは国内を勧める声もあった。9月18日に日米いずれかのプロに進む意思を表明した際には「五分五分」と話していたが、その後も周囲と相談しながら進むべき道を悩み続けてきた。

 それでも、大谷の夢に対する思いは強かった。数日のうちに佐々木洋監督(38)ら学校側との話し合いで最終決定するとみられるが、大谷がメジャー挑戦の意思を覆す可能性は低い。20日か21日には、自らの口で意思を表明する見込みだ。

 大谷はこれまでドジャース、レンジャーズ、レッドソックスの3球団と直接面談をした。体は成長過程にあり、慣れない生活環境や英語への対応が野球に影響するリスクもあるが、11日にレッドソックスと面談した後には「野球以外の言葉や環境の部分ですごく不安があったけど、解消してくれた。(米国での生活は)大丈夫かなと思う」と語っていた。さらに「言葉も自分でなるべく話せるように、そういうのも踏まえてプロだと言われた。そういうのも自分でやらなきゃいけないと思う」などとも話しており、あらゆる不安にも決意は揺るがなかったようだ。

 日本のプロ野球で実績を持たない大谷は、マイナーリーグからプロの第1歩を踏み出す。メジャー昇格までは、激しい競争原理の中で勝ち抜かなければならない。だが、こうした育成方法もプラス材料と受け止めている。大リーグ球団との面談後に「なかなか上には上がれず、下のマイナーリーグでの練習を大事にして、メジャーに上げてくると話を聞かせてもらった。そこは監督も自分もすごく賛成している部分もある」と話していた。

 日本野球機構(NPB)のドラフト会議は25日に迫っており、大谷を1位候補としてリストアップしていた国内各球団は対応を余儀なくされる。大谷がメジャー挑戦を表明しても、ルール上は大谷をドラフト指名できる。大きなリスクは伴うものの、交渉権を獲得してから大谷を説得すべく、強行指名する球団が出てくる可能性もある。

 メジャーでは直接面談した3球団の他にも、ヤンキースなど興味を示す球団がある。日本のドラフトで上位指名候補に挙がっていた高校生が、直接、米球界入りしたケースは過去に例がない。高校生史上最速の160キロをたたき出した18歳が覚悟を持って海を渡る。

 ◆高校生と大リーグとの交渉

 日本のドラフトに指名された場合は翌年3月31日まで指名球団に交渉権があり、大リーグとの契約は4月1日以降になる見込み。3月31日までに外国チームと契約を交わすことは、現在のルールでは想定されていない。ドラフトで指名がなかった選手では97年に天理・川畑健一郎外野手がレッドソックス、大曲工・後松重栄投手がメッツ、09年に日生学園三・山林芳則投手がブレーブス、10年に文徳・高野一哉投手がドジャースと契約した例などがある。