守護神いらず!?

 ソフトバンクのドラフト1位、亜大・東浜巨投手(22=沖縄尚学)が11月30日、都内のホテルで仮契約した。契約金1億円プラス出来高5000万円、年俸1500万円。背番号は「16」に決まった。大学4年間で62試合に登板し40完投。プロでも先発ローテーション入りし、65年ドラフト制以降のルーキーでは球団初、パ・リーグでは90年の野茂英雄(近鉄)以来の200イニング超えでの新人王を誓った。(金額は推定)

 大きな夢への第1歩を踏み出した。ソフトバンクの帽子とユニホームの上着を着た東浜は、無数のフラッシュを浴びながら自信に満ちあふれた笑顔を見せた。「実感が湧いてきました」。10月25日のドラフト会議から36日。神宮大会、母校・沖縄尚学での教育実習と超過密スケジュールが続き、ようやく仮契約となった。

 最高条件の契約金と年俸、背番号「16」は即戦力としての期待の表れだ。東浜本人は先発ローテーション入りだけではなく、先発完投、200イニングを目標に掲げた。「完封よりも完投にこだわっています。マウンドに上がるなら最後まで投げる。200イニングはどのくらいのペースで投げるのか想像はつかないですが、投げる機会があれば投げたい」と目に力を込めた。

 200イニングは沢村賞を受賞した摂津でも満たさず、両リーグでクリアしたのはロッテ成瀬、広島前田健の2人だけ。分業型の現代野球ではエース級だけが挑戦できる偉業でもある。ルーキーで大台に到達すればパでは90年の野茂以来、大卒ルーキーなら87年の近鉄阿波野(亜大)日本ハム西崎(愛知工大)の2人以来となる。

 セでは昨年44年ぶりに巨人沢村が記録した。09年春、東都デビューとなる中大戦で投げ合ったライバルだけに「大学で戦った人がプロで活躍するのは励みだし大きな刺激。自分もやれるかもという思いはあります」と大きな後押しとなっている。東都の記録となった通算22完封ばかりが目立つが、62試合で40完投を記録したペースでプロでも1年間投げ続ければ、200イニングは不可能ではない。

 温厚で優等生なイメージが強いが「やるからには1番になりたい。1年目から力で勝負したい。新人王も狙えるのなら狙いたい。まずは1軍に入ること」と負けん気も見せた。キャンプでは摂津、大隣の左右エースから練習の仕方や意識などを貪欲に学ぶつもり。センバツV腕、東都の怪物…。これから踏み出すプロのステージでも伝説をつくる。【石橋隆雄】