阪神藤川球児投手(28)が16日、来季の契約交渉に臨み、1億2000万円増の推定4億円で契約更改した。来季29歳で年俸4億円は、投手としては球界最年少記録だ。メジャーへの思いは持ち続けるとしながらも封印し、来季は打倒巨人での日本一と、来年3月に行われる第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での世界一というダブル快挙を目指す。

 予想以上の昇給に、満面の笑みが広がった。入団11年目で年俸4億円に到達。日本球界の投手では佐々木、上原、岩瀬に次いで4人目となる“大台”に、藤川は素直な心境を語った。

 藤川

 もう十分。十分過ぎます。いい評価をしていただきました。期待のあらわれだと思う。これまで以上に重責を背負ってやらなければならない。

 05年の大ブレークから、わずか4シーズン。当時2200万円だった年俸は、約18倍に上がった。阪神の生え抜きでは初の4億円選手となった。

 今季も阪神不動のクローザーとして君臨。開幕から球団新の11連続セーブを記録するなど、リーグ2位タイの38セーブを挙げた。防御率もプロ入り自己最高の0・67と、抜群の安定感を誇った。シーズン終盤にはリードされた場面でも逆転のために2イニング以上の登板もいとわなかった。大車輪の活躍にふさわしい大幅昇給となった。

 午後1時から始まった交渉は、1時間40分を越す長時間となった。その大半が来季の阪神の戦いと、3月開催予定の第2回WBC出場について。今オフは早々と来季のメジャー挑戦を“封印”した男は、この日あらためて球団側に「打倒巨人」を宣言した。

 「(メジャー挑戦の)思いは持ち続けるが、阪神に入って10年。酸いも甘いも知った。来年はもう1回、阪神で巨人を倒したいという気持ちが強い」。ライバルを蹴散らしての覇権奪回を誓った。

 世界一連覇への思いも募らせた。前回WBC、そして今年8月の北京五輪では中継ぎとしてチームの勝利に貢献してきたが、第2回WBCでは“本職”でもあるクローザーの筆頭候補に挙げられている。「まずはコンディショニングを仕上げること。8割ではダメ。故障をしたら100%自分の責任。自分に言い訳のきかない環境をつくりたい」。並々ならぬ決意で、自身3度目の国際舞台に立つ覚悟を決めた。

 阪神の「球児」から球界の「球児」へ。年を重ねる度に責任も増大していくが、この男にはそれをはね返すだけの技術と精神力が備わっている。【石田泰隆】