<WBC:日本13-4韓国>◇1次ラウンドB組◇10日◇東京ドーム

今回のWBC出場を前に、ダルビッシュ有投手は自らの立ち位置、求められる役割を十分に受け止めて出場を決断した。

昨年のサッカーW杯が実証したように、異様な盛り上がりと注目度を集めるのが、国際大会での日本代表。第2回大会の胴上げ投手で、チーム最年長となるダルビッシュは、若い侍ジャパンの矢面に立って重圧を受け止める覚悟を決めた。合流前「戦争に行くわけじゃない」とコメントしたのも、日本人が生真面目すぎるゆえ、チーム内に漂いがちな悲壮感を和らげるためだったに違いない。

連覇した09年当時、22歳の若手だったダルビッシュは、イチロー、松坂大輔ら先輩メジャーリーガーの存在の大きさを肌で感じた。食事会だけでなく、オフの時間にはゴルフや買い物に足を運ぶなど、先頭に立ってチーム全体をリラックスさせようとしていた。今回、宮崎合宿初日から参加したのも、ほぼ面識のない若手との交流を深めるのが最大の目的だった。09年に実感したように、メジャー組がいれば世界レベルを身近に感じ、米国などのスター軍団にも臆することなく、立ち向かえる。戦力としてだけでなく、メンタリティーでも貢献することが、ダルビッシュの願いだった。

合流以来、多彩な球種の握りなどを惜しげもなく、後輩たちに助言しているのも、すべては日本球界の将来のため。かつてダルビッシュは、危機感を込めて言った。「共有することがないから、大事な技術やノウハウが自分の人生の中で終わってしまうんです」。デビュー当時「やんちゃ」なイメージだった若者は、数々の修羅場を経験し、メジャーでもまれたことで、国際感覚豊かな「ジェントルマン」になっていた。【MLB担当=四竈衛】