侍ジャパンの大谷翔平投手(28)が、気迫でチームを劇的な逆転サヨナラ勝ちに導いた。

1点を追う9回、先頭で二塁打。派手なアクションでベンチを鼓舞し、村上の逆転打につなげた。エンゼルスの同僚・トラウトとの直接対決となる決勝の日米決戦は、リリーフ待機の秘策を切り札に臨む。

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大谷の覇気は、とてつもなかった。一気に、空気が変わった。1点を追う9回の先頭、メキシコの守護神ガエゴスの初球を打ち返した。ヘルメットを飛ばし、全力疾走の二塁打。ベース上で両腕を振り上げた。繰り返し、3度も。口を大きく開け、味方ベンチに向かって叫んだ。これまでにないほどの気迫だった。「本当にこっからだぞと」。野球少年の時から変わらない負けん気の強さが、自然と行動に表れた。

ヘルメットを自ら飛ばして激走する姿も、かつて見せたことがない。「脱げそうだったので、直すより脱いだ方がいいかなと」。それよりも、点を取りにいく明確な意志があった。「打球的に三塁を狙える」。結果的には二塁打となったが、少しでも前に、前に。その心意気をプレーで示す、不屈の二刀流たる姿だった。「必ず最後に1点取れる」。自分を信じ、仲間に託し、最高の結果につなげた。

3点を先制された4回、鋭い眼光を見せた。「なかなか1本出ない嫌な流れで苦しかった」。同点の好機を逃した8回も、見逃し三振に倒れた近藤を出迎え、大きく口を開けて鼓舞し続けた。「何回か、チーム全体として折れかけていた。最後まで諦めないで、本当にみんな素晴らしかった。こんなゲームができるのは人生の中でもそうあることではないですし、本当に楽しいゲームでした」。悔しがり、喜び、前向きな姿勢を全身で表現する。貫いた勝ち気が土壇場で通じた。

頂点まで、あと1勝。エンゼルスの同僚トラウトを主将とする、過去最強の米国に挑む。「お互い知っている仲で、互いの代表としてできるのは特別なこと」。状態次第となるが、DHと同時にリリーフでも準備を整える。DH解除は、試合を締める場面での采配が現実的。胴上げ投手の可能性もある大一番へ「最高の舞台で、最高の相手。必ず勝つんだという強い気持ちを持って全員で頑張りたい」。悲願の世界一のタイトルは、もう目の前にある。【斎藤庸裕】

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