世界一への号砲が鳴り響いた。侍ジャパン村上宗隆内野手(23)が反撃弾を決めた。ターナーのソロ本塁打で1点を先制された直後の2回裏先頭。初球を右翼席上段へ運ぶと、しばらく打球を見つめた。

「いや、もう最高。完璧です」

打った瞬間、スタンドインを確信した。今大会7試合30打席目での1号ソロ。逆転サヨナラ打を放った前夜に続く快音だ。

「すぐ追いつきたい展開。一振りで追いつくことができてすごくよかった」

大会途中で4番から5番となった。苦しんだ主砲には、少なからずジェラシーがあった。大谷のフリー打撃を見て、モヤモヤした感情はゼロではない。昨季の3冠王。ただ、圧倒的な飛距離のメジャーリーガーは誰がどう見ても、すごい。

「ダルさん、どうしたらいいですか」。自然と質問をぶつけていた。練習前に、食事の席でも。サプリメントのことトレーニングのこと。成長の糧を欲していた。「終わってみたら、うれしい気持ちもありますけど、悔しい気持ちもある」。そう思えるから、また1つ強くなれる。

世界一のシャンパンファイトでは感情を解き放った。「ダルさん、本当にありがとうございます!」と、先輩の頭に容赦なく注いだ。「翔平、翔平!」。呼び捨てにした大谷には頭からかけられた。「師匠、アベックだ! 一緒にかけよう!」。そろってアーチを放った仲良しの岡本とも喜びを分かち合った。「3年後、またこの景色を見られるように頑張ります」。26年の第6回WBC。その時は、最後まで4番に座り、また美酒を浴びる。【中野椋】

○…負傷の仲間の思いも背負って戦った。左脇腹痛で辞退した鈴木と腰痛で1次ラウンド後に離脱した栗林のユニホームも東京ドームからともに“渡米”。ローンデポパークのベンチに飾られた。村上は試合後、鈴木のユニホームを手に記念撮影。その首元には金メダルがかけられていた。不調の自身を動画で励ましてくれた先輩も、心の中ではワンチームだった。

【WBC】 侍ジャパンが3大会ぶり世界一! 大谷がトラウト三振斬りでMVP/決勝戦詳細